SOMA

SOMA

開発: Frictional Games発売: Frictional Games¥1,700
アクションアドベンチャーインディー

Steam レビュー

非常に好評

PlayNext レビュー

深海の底で目が覚めた瞬間、あなたはすでにこのゲームの罠にはまっている。SOMAが問いかけるのは「あなたは本当に自分が思っている人間なのか」という一点だ。ホラーゲームとして売られているが、その本質はSFホラーというジャンルの皮をかぶった哲学的問答であり、プレイを終えたあとも答えが出ないまま頭の中をぐるぐると回り続ける。それがこのゲームの最大の特徴であり、他のホラーゲームとは一線を画す理由でもある。 ゲームプレイそのものは探索とパズル、そして逃走で構成されている。プレイヤーは広大な海底施設の中を歩き回り、散らばった音声ログや文書を拾い集めながら、何が起きたのかを少しずつ把握していく。戦闘システムは存在しない。敵と遭遇した場合の選択肢はひとつ、逃げるか隠れるかだ。パズルは難解というよりも直感的で、「このケーブルを繋げばどうなるか」という因果関係をゆっくり考えれば解ける設計になっている。操作は重く、リアルな物理感覚がある。棚のものを雑に触れると音を立てて落ち、それが敵を引き寄せる。この「うっかり」が恐怖を生み出す仕組みになっており、緊張感は外部から与えられるのではなく、プレイヤー自身の行動から生まれる。 テンポは非常にゆっくりしている。走ることもできるが、基本的にはこの世界をじっくり観察しながら歩くゲームだ。スクリーンショットを撮る余裕もあるし、引き出しをひとつひとつ開けて環境語りに耳を傾ける時間もある。逆に言えば、アクションゲームのような刺激を求めているなら明らかに向いていない。このゲームの緊張感は継続的なプレッシャーではなく、静寂の中に突然走る電流のようなものだ。何分も何も起きない廊下を歩き、角を曲がった瞬間に心臓が止まる体験を繰り返す。 ビジュアルは発売から10年近くが経過しても十分通用する。深海という舞台を活かした暗く閉塞感のある環境、古びた金属の質感、水の揺らめき、生物機械的なグロテスクさを持つクリーチャーのデザイン、どれも一貫した美学で統一されている。特に施設の外、海底を歩くシーンの静寂と広がりは圧巻だ。普段の閉塞感との対比として機能しており、解放感と同時にどこか違う種類の孤独感を感じさせる。サウンドデザインは傑出している。登場人物の音声演技は水準が高く、音楽はほぼ存在せず、代わりに施設の環境音が空間を満たしている。金属のきしみ、水が滴る音、遠くから聞こえる何かの唸り。ヘッドフォンでのプレイを強く推奨する。 物語は西暦2103年の地球滅亡後という設定から始まる。人類はほぼ絶滅しており、残された意識が海底施設CATAに集まっている。主人公のサイモンは目が覚めると自分が深海にいることに気づき、何が起きたのかを探りながら施設を移動していく。この旅の中で「意識とは何か」「人格のコピーは本人と言えるのか」「死とはどの時点で訪れるのか」という問いが次々と投げかけられる。ゲームが進むにつれて状況は複雑になり、選択を迫られる場面では答えが一つに定まらない。プレイ後にインターネットで感想を検索すると、プレイヤーによって解釈が大きく分かれていることがわかる。それ自体がこのゲームの成功を示している。 同じFrictional GamesのAmnesia: The Dark Descentと比較すると、SOMAはホラーの比重が明確に下がっている。Amnesiaは恐怖そのものがゲームの目的だったが、SOMAにおける恐怖は物語を体験させるための装置に過ぎない。OUTLAST系の純粋なサバイバルホラーを求めているなら物足りないと感じるかもしれない。むしろPORTALシリーズのような「謎解きをしながら世界の真相に近づいていく」構造に近く、そこにホラーの雰囲気を加えたイメージが近い。BioShockとも近いが、あちらより戦闘への依存度がずっと低い。 プレイ時間は一周8〜12時間程度。周回要素は薄く、エンディング分岐も実質的にはないため、基本的に一周完結のゲームだ。ただし一周の密度は高く、音声ログや文書を丁寧に回収しながらプレイすれば、世界観の理解度が格段に変わる。トロフィーコンプリートは比較的容易で、見逃したアイテムを回収するために特定の場面を再プレイする程度の手間しかかからない。また「SAFE MODE」というオプションがあり、これを有効にすると敵がプレイヤーにダメージを与えなくなる。ホラー要素が苦手でも物語だけを楽しみたい人には有用な設定だ。 注意点として、このゲームは特定の哲学的テーマに対して一定の立場を取っており、それに不快感を覚えるプレイヤーも存在する。「意識とは何か」という問いに対するゲームの答え方が、人によっては虚無的に感じられるかもしれない。また、移動速度が遅く、探索ゲーム特有のとりこぼしの不安が付きまとう。ファストトラベルは存在しないため、一度来た道を戻る場面では若干のストレスを感じることもある。 SFが好きで、かつ「ゲームに考えさせられたい」と思っている人には全力でおすすめする。ケン・マクラウドやグレッグ・イーガンのようなハードSFを好む読者、あるいはAnnihilation(監視)のような問いかけ型のSFが好きな映画ファンにも刺さるはずだ。一方、明確な答えのない哲学的テーマに食傷気味な人、あるいは純粋なアクションやホラーのスリルを求めている人には向いていない。1,700円という価格は内容に対して明らかに安価であり、ホラーが苦手でもSAFEモードで妥協点を見つけられる懐の深さがある。プレイし終えたあと、しばらく現実の日常がどこか薄く感じられるような体験をしたい人のためのゲームだ。
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スクリーンショット

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