Oxenfree

Oxenfree

開発: Night School Studio発売: Night School Studio¥1,200
アドベンチャーインディー

Steam レビュー

非常に好評

PlayNext レビュー

深夜の無人島、波の音、ラジオから流れる不思議な電波——Oxenfreeの体験はそこから始まる。このゲームはホラーでもなく、アクションでもなく、「選択肢のある幽霊話」と表現するのが最も近い。プレイヤーはアレックスという少女として島に乗り込み、霊的な亀裂を開いてしまった後の一夜を、友人たちとの会話を通じて乗り越えていく。それだけ聞くとありふれたインディーゲームに聞こえるかもしれないが、このゲームの核心はシステムではなく「空気感」にある。プレイ中ずっと、なにかがおかしい、でも離れられない、という感覚に包まれ続ける体験は、他のゲームでなかなか味わえない。 操作はシンプルで、左右に歩いてシーンを移動しながら、会話が始まると画面下に選択肢が浮かぶ。従来のアドベンチャーゲームのように「選択肢が現れて止まる」のではなく、歩きながら選択肢を選び続ける仕組みになっている。これが絶妙で、会話が途切れずリアルタイムで流れていくため、実際に友人と話しているような自然なリズムが生まれる。黙って選択しないことも選択のひとつで、沈黙が続くとキャラクターが別の話題に移ったり、気まずい空気が漂ったりする。テンポは全体的にゆっくりで、アクション的な要素は皆無に近い。「走り回って謎を解く」ゲームではなく、「歩きながら話す」ゲームだ。 ビジュアルは2Dの横スクロールで、シルエット調のキャラクターが薄暗い島の背景の上を動く。木々のシルエット、廃墟の建物、月明かりの海——それぞれのシーンが絵画のような構図で作られており、静止画として切り取っても美しい。色使いは抑えめで深く、昼間のシーンでも常にどこかひんやりとした色調が保たれている。この美術的な統一感がゲーム全体の「語られない不安」を支えている。音楽はシンセとアコースティックが混在するアンビエント寄りのサウンドトラックで、シーンに応じてシームレスに変化する。ラジオの雑音、幽霊が乗っ取った電波から聞こえる声、島の自然音——これらが重なり合う音響設計は特筆に値する。ヘッドフォンでのプレイを強く勧める。 物語の舞台は、かつて海軍基地として使われていたエドワーズ島。アレックスは義理の弟ジョナスを連れてここへ来るが、仲間の好奇心がきっかけで古いラジオを使った儀式のようなことをしてしまい、時空の亀裂を開いてしまう。そこから一夜をかけて、島に閉じ込められた謎の存在と対話しながら原因を突き止め、友人たちを守ろうとする。ホラーとしての「驚かせる」要素はほぼなく、代わりにじわじわと積み重なる違和感と、それが解き明かされていく過程の「気持ち悪い正しさ」がある。ストーリーの核心はネタバレしたくないが、「幽霊が何をしたいのか」「アレックスにとって本当の問題は何か」という問いが、プレイが進むにつれて少しずつ輪郭を帯びていく構成が見事だ。 似たジャンルのゲームとしてLIFE IS STRANGEを挙げると、比較が分かりやすい。どちらも選択肢ベースで感情的な物語を持つが、Oxenfreeの方がテキストの量が少なく、プレイヤーに解釈を委ねる余白が大きい。LIFE IS STRANGEがティーンドラマのような感情の起伏を全面に出しているのに対し、Oxenfreeはもう少し引き算的で、「言わないことで語る」スタイルが強い。Gone Homeとも近いが、あちらが完全に非線形の探索型なのに対し、OxenfreeはNPCとのリアルタイム会話が軸になっているため、よりインタラクティブな読書体験に近い。 プレイ時間は一周約4〜5時間。ボリュームは少ないが、エンディングが複数あるため、周回プレイを前提に設計されている。2周目以降はキャラクターが「前の周回の記憶を持っているかのような」発言をすることがあり、このメタ的な仕掛けが作品のテーマと深く結びついている。フルコンプを目指す場合は3周前後必要になるが、各周回でルートの印象が変わるため、繰り返しプレイの苦痛は少ない。実績はほぼ全て選択肢に紐づいているため、攻略情報を参照しながら選択肢を埋めていく作業になる。 注意点としては、ゲームとして「何かをする」快感を求める人には向かない。謎解きも戦闘もなく、あるのは歩くことと話すことだけだ。また英語音声のみで字幕は英語か他の言語だが日本語字幕は現時点では公式には用意されていないため、英語のリスニングと読解がある程度できることが必要になる。物語の細部はセリフに宿っており、聞き流すと重要な伏線を見逃す。一方で語彙はそれほど難しくなく、ティーンエイジャーの会話が中心なため、英語が苦手でも雰囲気は十分楽しめる。 このゲームを特に強くすすめたいのは、夜に一人でゆっくりと物語に浸りたい人、静かなホラーや怪談が好きな人、そして「キャラクターの関係性の変化」を楽しめる人だ。逆に、明確な達成感や戦略性を求めるプレイヤー、テキストアドベンチャーそのものに抵抗がある人にはすすめにくい。1,200円という価格は一周4時間のボリュームを考えると妥当で、特にセール時には間違いなく買い得の一本。「ゲームで怖い話を体験したい、でもビクビクしたくない」という人にとって、これほどちょうどいいタイトルはなかなかない。
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スクリーンショット

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