What Remains of Edith Finch

What Remains of Edith Finch

開発: Giant Sparrow発売: Annapurna Interactive¥662
アドベンチャーインディー

Steam レビュー

非常に好評

PlayNext レビュー

「死」をテーマにしたゲームは数多くあるが、これほど死を「愛おしく」描いた作品はほかにない。『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』は、プレイヤーに「生きていた人間の記憶」を直接体験させるゲームだ。ホラーでもなく、悲劇の押しつけでもない。ただ、それぞれの命が尽きた瞬間を、その人物自身の視点から静かに見届けていく——その体験は、プレイが終わったあともしばらく頭を離れない。 操作は非常にシンプルで、基本は一人称視点での歩行と、カーソルを使ったインタラクションのみ。難しいパズルも、アクション要素も一切ない。それでも、このゲームが退屈に感じられることはほとんどないだろう。なぜなら、各家族の「命が尽きた日」を追体験するたびに、ゲームのルール自体が変わるからだ。あるシーンでは絵本のような2Dアニメーションの世界を操り、別のシーンでは浴槽に浸かりながら空想の王国を統治し、またあるシーンでは深夜の缶詰工場で単純作業を繰り返しながら、頭の中だけで別の世界を旅する。毎回ゲームデザインそのものが再構築されるため、「次はどんな体験が来るのか」という期待感が最後まで持続する。 ビジュアルはリアルとファンタジーの境界線を意図的に曖昧にしたスタイルで、舞台となるフィンチ家の屋敷はまるで海辺に突き刺さった夢のような建築物だ。増改築を繰り返した結果、部屋が部屋の上に積み重なり、廊下が予想外の方向に伸びている。この「整合性のなさ」が、逆に家族の長い歴史と各人の個性を建物そのもので語っている。光の使い方と色調は章ごとに異なり、ある章は暖かなオレンジの夕焼けに包まれ、別の章は冷たい青白い月明かりの中で展開する。テキストの演出も特徴的で、語り手のセリフが文字として空間に浮かび上がり、それ自体がキャラクターとして動いたり消えたりする。サウンドトラックはオーケストラを基調としながら、各家族のパートに合わせた音楽性の変化が鮮明で、音楽だけで感情を操作されている感覚に近い。 物語の構造は、主人公エディスが封鎖された実家を再訪し、屋敷に残された痕跡をたどりながら一族の歴史を掘り起こしていくというもの。フィンチ家には「一族は呪われている」という言い伝えがあり、実際に家族のほぼ全員が若くして、あるいは奇妙な状況で命を落としている。だがこのゲームは「呪い」を怪奇として描くのではなく、人間一人ひとりの内面と、その人がどのように世界を見ていたかを丁寧に掘り下げる。登場する家族は十数人、それぞれのエピソードは短いが、密度が非常に高く、数分のパートで一人の人生の本質を伝えてくる。ネタバレを避けつつ言うなら、「あるエピソード」は多くのプレイヤーに最も強い印象を残すと同時に、このゲームで最もゲームデザインとして革新的な表現を使っている章でもある。 同じ「ウォーキングシミュレーター」と呼ばれるジャンルでは『Gone Home』や『Firewatch』が有名だが、性質は異なる。『Gone Home』が一つの家族の秘密を一本線で解明していくのに対し、本作はオムニバス形式で複数の人生を体験させる。『Firewatch』が孤独と逃避という感情を自然の中で描くなら、本作はより直接的に「死」と「記憶」と向き合う。プレイヤーへの問いかけの鋭さという点では、本作が三作の中で最も強烈だ。また日本のゲームでいえば『かまいたちの夜』などのサウンドノベルに近い「読む体験」の感触もあるが、本作はテキストを読ませるのではなく、インタラクティブな体験として感情に直接訴える設計になっている。 プレイ時間は2〜3時間が目安で、一度クリアすれば全てを見られる。周回要素やエンドコンテンツはほぼないが、見落としたインタラクションを探したり、気になったシーンを再度プレイするために遊び直すプレイヤーも多い。価格が662円という点も含め、コストパフォーマンスの議論は難しいが、「2〜3時間の映画体験」としてとらえれば決して高くはない。 ただし合わない人もいる。「ゲームを遊んでいる」という感触、操作に対するフィードバック、挑戦と達成の繰り返しを求めるなら、この作品は物足りなく感じるだろう。基本的には受け身に近い体験であり、自分でストーリーを作り上げる自由度はない。また死が繰り返し描かれるため、精神的に消耗している状態では避けた方が無難かもしれない。 強くおすすめするのは、映画や小説が好きで、物語の「余韻」を大切にするプレイヤーだ。ゲームという形式でしか伝えられない表現があると信じている人、あるいはゲームに疲れていて「何か違うもの」を探している人にも刺さる。逆に言えば、このゲームは「ゲームとは何か」を少し拡張してくれる体験でもある。プレイが終わったあと、しばらく誰かと話したくなるか、あるいは静かに一人でいたくなるか——そのどちらかの感情を引き出してくれるなら、それはゲームが仕事をしたということだ。
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スクリーンショット

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