
仁王 Complete Edition
Nioh: Complete Edition
開発: KOEI TECMO GAMES CO., LTD.発売: KOEI TECMO GAMES CO., LTD.¥957
アクションRPG
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
死ぬたびに「なぜ死んだのか」が明確にわかる。これが仁王をダークソウル系のゲームと呼ぶには物足りない理由だ。ソウルライク全般がプレイヤーに「学習と再挑戦」を要求するのに対し、仁王は「スタミナ管理と姿勢崩し」というシステムをさらに一段掘り下げ、格闘ゲームのような読み合いを武士道的な死闘として表現している。ただ難しいのではなく、仕組みを理解した瞬間に快感へと反転する、その設計の精密さこそが本作最大の魅力だ。
戦闘の核にあるのは「気力システム」と「三段構え」だ。攻撃と回避は気力を消費し、気力が尽きれば無防備になる。だが敵も同じで、敵の気力を削り切れば「気力切れ」を誘発して大ダメージを与えられる。この攻防が一戦一戦に凝縮されており、単なるパターン暗記ではなく、その場その場での判断と操作が問われる。上段・中段・下段の三段構えはそれぞれ性能が異なり、上段は火力重視、中段はバランス型、下段は気力回復と回避に優れる。妖怪との戦いでは妖怪化して力押しすることもでき、人間の武将戦とは異なる緊張感がある。武器種も刀・槍・斧・二刀流・鎖鎌・薙刀と豊富で、それぞれに固有のスキルツリーがあり、好みのスタイルを深く掘り下げられる。
最初の数時間は確実に死にまくる。最初のボスである「一つ目入道」に何十回もやられるプレイヤーは少なくない。しかし、気力の使い方と構えの切り替えを体得した瞬間、ゲームの見え方が変わる。ボスが繰り出す攻撃を「読む」のではなく「対話する」感覚に近い。手応えのあるボスを倒したときの達成感は、並のアクションゲームでは味わえない濃度がある。ソウルシリーズと比べると、戦闘のテンポは速く、操作はより忙しい。防御を固めて待つ戦術は仁王ではほぼ通用せず、常に動き続けながら気力を管理する必要がある。
ルートに落ちているアイテムや敵ドロップからひたすら装備が手に入るハクスラ要素も大きな中毒性をもたらす。武器や防具にはランダムな特殊効果が付与されており、「もっと良い装備が出るかもしれない」という誘惑でプレイをやめられなくなる。ソウルシリーズにはないこの要素が、Diablo系を好むプレイヤーにも刺さる理由だ。最終的には装備のビルドを作り込む楽しさが戦闘の深みと合わさり、周回プレイへの動機付けになっている。
ビジュアルは2017年発売のタイトルとしては水準を超えており、2026年現在でも遊べるレベルのグラフィックを維持している。妖怪のデザインは日本の古典的な怪異をベースにしつつ、濃厚なダーク・ファンタジー風のアレンジが施されており、登場するたびに威圧感がある。ステージは戦国時代の城下町・山岳地帯・海沿いの漁村など多様で、幽玄な雰囲気を保ちながらも各エリアに個性がある。サウンドは和楽器と緊張感あるオーケストラを組み合わせており、刀の斬撃音や妖怪の唸り声など効果音の質も高い。戦闘中の緊張感とボス撃破後の静寂の対比が、感情的な起伏をうまく演出している。
ストーリーは実在の戦国武将を大胆に組み込んだオリジナル歴史ファンタジーだ。主人公ウィリアム・アダムスは実際に江戸時代初期に日本に渡った英国人航海士をモデルにしており、史実のキャラクターが架空の妖怪と組み合わさることでリアルさとファンタジーが独特のバランスで共存している。本多忠勝、前田慶次、加藤清正といった武将が強敵として、あるいは味方として登場し、日本史に詳しいプレイヤーには別の楽しみ方もある。ストーリー自体はソウルシリーズのような難解な断片集ではなく、カットシーンで丁寧に語られるため、アクションRPGとしての物語体験を重視するプレイヤーにも安心だ。
ダークソウルシリーズとの差別化として、仁王は「ひとりで悩む孤独な体験」よりも「素材を集めてビルドを磨く達成感」に重きを置いている。エルデンリングのような広大なオープンワールド探索はなく、ステージクリア型の設計なので迷子になりにくい。フロムソフトウェアの作品よりも読み解くべきストーリーのハードルが低く、純粋に戦闘の深みを楽しみたいプレイヤーには仁王の方が向いている場合もある。
Complete Editionにはメインゲームに加えてDLC三本(竜の道・女王の目・元和偃武)が収録されており、ボリュームは相当なものだ。メインストーリークリアまでおよそ40〜60時間、DLCまで含めると100時間を超える。そこから難易度が上がる「強者」「後生」「転生」モードへと周回が続き、最終的にはビルド研究が主戦場になる。やり込み要素の底は深い。
注意点として、ゲームの難易度は序盤が特に急峻だ。最初の2〜3ボスで心が折れるプレイヤーは少なくない。気力システムの理解は必須であり、説明を読まずに感覚だけで乗り越えようとすると詰まりやすい。また、ハクスラ要素が濃い分、装備管理の煩雑さを感じる場面もある。オンライン協力プレイは可能だが、サーバー人口はピーク時より少なく、マッチングに時間がかかることがある。
この作品を強く勧めたいのは、ソウルシリーズを一通り経験してさらに尖った戦闘システムを求めているプレイヤー、ハクスラ系RPGのビルド構築が好きでアクション要素も欲しい人、戦国時代や日本の妖怪文化に興味があるゲーマーだ。逆に、オープンワールドの自由な探索が主目的の人、死亡ペナルティや高難度に強いストレスを感じやすい人、マルチプレイを中心に遊びたい人には合わない可能性が高い。¥957という価格でこれだけの密度の体験が得られることを考えれば、アクションRPGに本気で向き合う覚悟がある人にとって、これほどコストパフォーマンスの高い選択肢はなかなかない。
スクリーンショット











