
Mount & Blade II: Bannerlord
開発: TaleWorlds Entertainment発売: TaleWorlds Entertainment¥3,250
アクションインディーRPGシミュレーションストラテジー
Steam レビュー
好評
PlayNext レビュー
「自分だけの中世英雄譚を書く」という体験が、これほど完璧に実現されたゲームは他にない。Mount & Blade II: Bannerlordは、プレイヤーを名もなき流浪の戦士として中世風のカルラディア大陸に放り込み、「どう生きるか」をすべて自分で決めさせる。商人として財を蓄えるか、傭兵として名声を稼ぐか、はたまた反乱軍を率いて自分の王国を打ち立てるか——その選択肢の広さが、このゲーム最大の魅力であり、ほかのゲームでは味わえない独特の没入感を生む。
戦闘はこのゲームの心臓部だ。剣や槍、弓を装備した兵士を直接操作しながら、同時に数十人から数百人の部隊を指揮するリアルタイムバトルは、アクションとストラテジーが絶妙に融合している。マウスの動きで攻撃方向を指定し、タイミングよくブロックを決める近接戦闘は、慣れるまでに少々時間がかかるが、習熟したときの爽快感は格別だ。丘の上に弓兵を展開し、騎兵で側面を突いてから歩兵で押し込む——そういった戦術的判断がそのまま戦場の結果に反映されるとき、頭と体の両方を使っている感覚が生まれる。個人プレイとしても指揮官としても機能する、二重の手触りが病みつきになる。
マクロ視点では、フィールドマップ上での領地経営や政治工作が展開する。城や都市を落とせば領主として統治する義務が生まれ、食料の備蓄、守備兵の配置、工房や農地への投資を管理しなければならない。家臣との関係、他勢力との外交、戦争と和平のバランス——それらが複雑に絡み合い、「ちょっと領主に話しかけてから寝よう」が気づけば3時間経過していた、という現象を何度も引き起こす。序盤の物乞い同然の状態から、少しずつ兵を養い、交易路を確保し、ついに自国の旗を掲げる瞬間の達成感は、なかなか言語化できないものがある。
ビジュアルはリアル路線で、特に大規模合戦の画面は壮観だ。数百の兵士が野原で激突し、馬が駆け抜け、矢が降り注ぐ光景は今でも見応えがある。ただし最新の3Aタイトルほどのグラフィッククオリティではなく、キャラクターの表情や室内シーンはやや素朴に映る。サウンドは打撃音や馬蹄の響きなど戦場の臨場感を支える効果音が優秀で、BGMは中東・中央アジアを思わせる弦楽器主体の楽曲が雰囲気を高める。
世界観はファンタジー要素を排した純粋な中世風で、魔法も龍も登場しない。複数の派閥——騎士道的な帝国の残党、草原の遊牧民族、斧を振る蛮族など——が鎌倉時代的な群雄割拠を繰り広げており、それぞれに文化的背景と固有ユニットが存在する。メインクエストは「カルラディア帝国の後継者争い」に絡む形で存在するが、プレイヤーはこれを完全に無視して自分の野望だけを追うことも可能だ。物語を押しつけられないぶん、自分が紡いだ出来事こそが「自分のストーリー」になる。
比較対象として挙げるなら、Crusader Kings IIIとTotal Warシリーズの中間に位置するゲームだと言いたい。CK3のような深い政治シミュレーションと家系管理は持たないが、Total Warにあるバトルを自分で指揮しながらフィールド管理もするという感覚はよく似ている。ただしBannerlordは「自キャラクターの成長」と「馬上での一騎打ち」という個人アクションの比重が圧倒的に高く、そこが他のストラテジーゲームにはない独自性だ。前作Mount & Blade: Warbandと比べると、グラフィックと合戦規模が大幅に向上し、経済システムも刷新されている。
プレイ時間の目安は、ひとつのキャンペーンで軽く100時間を超える。序盤の生存戦略から中盤の勢力拡大、終盤の王国統一まで、飽きのくるペースが非常に遅い。さらにSteamワークショップのModが充実しており、グラフィック強化、ゲームバランス改善、全く別の時代設定(日本の戦国時代や中東など)に変換するModまで揃っている。バニラ状態でも十分に遊べるが、Modを導入すれば寿命が数倍に伸びると言っても過言ではない。
注意点として、序盤のとっつきにくさは正直に伝えておきたい。チュートリアルはあるものの、何をすべきかを手取り足取り教えてくれるゲームではない。序盤にどこへ向かえばいいかわからず、野盗に何度も殺されながらリスタートを繰り返すことは珍しくない。また開発がEarly Accessを脱したとはいえ、一部バグや最適化の甘さが残っており、大規模合戦ではフレームレートが落ちることもある。UIの情報量も多く、経営画面に圧倒される時期がある。
「自分で歴史を作りたい人」「サンドボックス型のゲームが好きな人」「戦略と近接アクションを両方楽しみたい人」には強くおすすめする。逆に、明確なストーリーラインやミッション目標に沿って進みたいプレイヤー、近接戦闘の難易度に苦手意識がある人、チュートリアルが親切でないと離脱してしまう人には合わない可能性がある。自由度の高さはそのまま「何をしてもいい」という孤独感にもなり得る。しかしその孤独感を乗り越えて自分の王国を築いたとき、このゲームは他のどんなタイトルも代替できない体験を与えてくれる。
スクリーンショット











