Kenshi

Kenshi

開発: Lo-Fi Games発売: Lo-Fi Games¥1,400
アクションインディーRPGシミュレーションストラテジー

Steam レビュー

好評

PlayNext レビュー

「負けることから始まる」ゲームがある。Kenshiはまさにそれだ。キャラクター作成を終えると、主人公は荒廃した砂漠の真ん中に一人放り出される。お金もなく、装備もなく、スキルもなく、目的すら提示されない。近くの街に向かえば、門番に入場料を要求される。払えなければ入れない。そのまま歩いていれば、盗賊に襲われて気を失い、気づいたときには奴隷として売られている——そういう体験が、このゲームの「始まり」だ。 普通のRPGなら屈辱的な導入として扱われるような出来事が、Kenshiでは日常だ。そして奇妙なことに、それが面白い。奴隷として連行される道中で街の場所を把握できる。腕を切り落とされた後に義肢を手に入れ、それがむしろキャラクターを強化する。何度も気絶しながら戦闘スキルは上がっていく。苦境そのものが成長のエンジンであり、世界への入り口になっている。 ゲームプレイの根幹は部隊管理とサバイバルにある。プレイヤーは最初は一人だが、金を貯えて仲間を雇い、やがて十数人規模の集団を率いるようになる。食料の確保、拠点の建設、農業や採掘による収入源の確立——ゲーム中盤以降は、かなりの割合が「生産と経営」に費やされる。アクションRPGというよりも、サバイバルシミュレーション的な感触が強い時間帯もある。 戦闘はリアルタイムで進行するが、複数キャラクターを同時に操作するため、慣れないうちは混乱しやすい。ポーズして指示を出す仕組みもなく、戦況を読んで逃げるか戦うかを即座に判断する必要がある。特に序盤は「まず逃げる」が正解になることが多く、無謀に戦って全滅するパターンを何度か経験してから学ぶ設計だ。操作感はお世辞にも洗練されているとは言えないが、そのぎこちなさが世界観の荒削りな質感とどこか合っている。 ビジュアルは独特の雰囲気を持つ。広大な砂漠、赤みがかった荒野、崩れかけた古代文明の遺跡——どれも褪せた色調で描かれており、「滅びかけた世界」という印象を一貫して与える。キャラクターモデルはやや粗いが、その粗さがインディーゲームとしての誠実さのようなものを感じさせる。サウンドトラックは穏やかで陰鬱なアンビエント系が中心で、砂漠を歩く孤独感を巧みに演出している。BGMが鳴り止み、風の音だけになる瞬間に、世界の広さと自分の小ささを感じることがある。 世界観の作り込みは、このゲームの最大の強みの一つだ。「Kenshiの世界」には人類の衰退した未来があり、複数の勢力が覇権を争っている。聖国(Holy Nation)という宗教的独裁国家、技術を崇拝するテック・ハンター、人類の征服を目指すシェク族——それぞれの勢力に論理と歴史があり、プレイヤーに「絶対的な善」を押しつけてこない。その世界で主人公は何者にでもなれる。商人として巨万の富を築く商人になってもいいし、奴隷解放組織を立ち上げてもいい。人食い族の集落を拠点にして世界の敵として君臨する選択肢すら存在する。 同ジャンルの作品と比較するなら、RimworldやDwarf Fortressに近い「サバイバル経営シム」の文脈に属する。しかしRimworldがトップダウンの神視点から集落を管理するゲームであるのに対し、Kenshiは世界の中に自分が存在するという実感がある。Mount & Bladeとも似た部隊管理の楽しさがあるが、Kenshiはよりオープンで、ストーリーの強制が極限まで排除されている。「次に何をすべきか」を常にプレイヤー自身が決める必要があり、自由度とその裏返しの「手持ち無沙汰感」の両方を感じることになる。 プレイ時間の目安は、ひとつの流れをやりきるまで軽く100時間以上かかる。序盤の底辺状態から始まり、拠点を構え、勢力に対して影響を与えられるようになるまでのプロセスが長い。しかしその長さは苦痛ではなく、積み上げていく充実感として機能している。エンドコンテンツと呼べる要素は明確には存在せず、「達成した」という終わり方よりも「飽きるまでやる」タイプのゲームだ。Steamワークショップによるモッドも充実しており、バニラに飽きた後も遊び方を拡張できる。 注意点として、技術的な完成度は高くない。バグは存在するし、AIの挙動がおかしくなることもある。UIは不親切で、序盤の情報量の少なさはほぼチュートリアルがないに等しい。最初の数時間は何をすればいいか分からず途方に暮れる可能性が高い。日本語ローカライズはあるものの翻訳の質にムラがある点も覚えておきたい。 「自分で物語を作るゲーム」が好きな人に強くおすすめできる。「底辺から這い上がる過程」を楽しめる人、経営や拠点管理が好きな人、自由度が高くゴールがないゲームでも楽しめる人には深くはまる一本だ。逆に、明確な目標やストーリーの牽引力を求める人、操作性の粗さにストレスを感じやすい人、序盤の理不尽さで折れやすい人には向かない。¥1,400という価格設定は、試すハードルをかなり低くしてくれている。序盤の洗礼を乗り越えられた人だけが知る、独特の達成感がこのゲームにはある。
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スクリーンショット

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