Kingdom Come: Deliverance

Kingdom Come: Deliverance

開発: Warhorse Studios発売: Warhorse Studios¥717
アクションアドベンチャーRPG

Steam レビュー

好評

PlayNext レビュー

「剣と魔法のファンタジー」に飽き果てた人間が、15世紀のボヘミア(現チェコ)という泥臭いリアルの中世に放り込まれたとき、何が起きるか。Kingdom Come: Deliveranceはその問いへの、ひとつの極端な回答だ。主人公のヘンリーは村の鍛冶屋の息子で、冒険者でも英雄でもない。剣の扱いも下手、読み書きもできない、酒を飲めば二日酔いで動けなくなる。そんな等身大の若者が、傭兵に両親を殺され、復讐と生存のために剣を握る——このゲームの核心はそこにある。「弱い自分が、少しずつ強くなっていく」という原始的なRPGの快感を、ファンタジーの誇張なしに体験させてくれる一本だ。 戦闘システムは、このゲームを語る上で避けて通れない。方向指定の打撃、受け流し、組み打ち、スタミナ管理——シンプルに聞こえるが、実際は格闘ゲームに近い反射と読み合いを要求される。序盤のヘンリーは文字通り弱く、村のゴロツキにすら負けることがある。しかし繰り返し剣を振るい、訓練を重ね、スキルが伸びるにつれて、確かにプレイヤー自身の「剣術の腕」が上がっていく感覚がある。これはレベル数値の成長ではなく、身体で覚える成長だ。戦闘だけでなく、鍵開け、弓、乗馬、錬金術、料理——あらゆる行動がスキルに紐づいており、ロールプレイの幅は驚くほど広い。 探索の手触りも独特だ。オープンワールドではあるが、マーカーで埋め尽くされた「タスク処理ゲーム」ではない。ナビゲーションには地図と羅針盤を自分で読む必要があり、道に迷うことも珍しくない。NPCへの聞き込み、痕跡の観察、証拠の収集——クエストの多くは「指示に従うだけ」ではなく、プレイヤー自身が考えて進める構造になっている。このテンポは現代のオープンワールドに慣れた人間には遅く感じるかもしれないが、ひとたびこの世界のリズムに乗れると、ボヘミアの丘を馬で駆け抜けることすら、それ自体が体験として豊かになる。 ビジュアル面では、CGではなく本物の自然と建築物をスキャンして作られた景観が圧倒的なリアリティを持つ。朝霧の立ち込める森、石造りの修道院、泥と血で汚れた戦場——どれも「絵として美しい」というより「そこにある」という存在感がある。武具や衣装の汚れが蓄積し、清潔度がNPCの反応に影響するなど、細部へのこだわりは異常なほどだ。サウンドも同様で、剣撃の金属音、馬蹄の響き、村の環境音が重なり合い、没入感を底上げしている。BGMは控えめで、サウンドトラックとして聴く類いのものではないが、世界観と喧嘩しない誠実な設計だ。 ストーリーは、ヘンリーという一人の若者の成長譚を軸に、14世紀末のボヘミア王国の政治的混乱を絡めて展開する。歴史的事実を土台にしているため、登場人物の多くが実在の人物を元にしており、フィクションでありながら教科書的な重みがある。「自分は何者なのか」という問いがゲームを通じて繰り返され、復讐劇としての単純な答えを超えた深みがある。ネタバレは避けるが、終盤の展開は「英雄譚」を期待していたプレイヤーの予想を、いい意味で裏切ってくれる。 比較するなら、The Witcher 3やSkyrimとは根本的に異なる。あれらは「すでに特別な存在」としてゲームが始まるが、KCDは「普通の人間」として始まり、最後まで「普通の人間」の延長線上にある。Dark Soulsとの比較で語られることもあるが、死=ゲームオーバーという緊張感よりも、「失敗してもやり直せる」という設計の方が近く、リスクの重さも異なる。あえて言えば、Red Dead Redemption 2に近い——世界の中で生きることそのものに価値を置く、没入型オープンワールドの系譜だ。 プレイ時間はメインクエストだけで40〜60時間、サイドクエストや探索を含めると軽く100時間を超える。周回は難易度やビルドを変えることで新鮮に楽しめるが、ストーリー自体が大きく分岐するゲームではない。エンドコンテンツはないに等しく、メインシナリオのクリア後は世界を自由に探索するのみ。DLC「A Woman's Lot」「Band of Bastards」等を導入すれば追加で数十時間楽しめる。 注意点として、序盤の難易度曲線は本物のストレスをもたらす。戦闘も、盗みも、読み書きも、最初はほぼ何もできない状態からスタートする。これは意図的な設計だが、慣れるまでに心が折れやすい。また、歴史的背景への興味がないと、クエストの文脈がわかりにくい場面もある。バグも完全には取り切れておらず、稀にクエストが詰まることがある。 こういう人に強くおすすめしたい——中世ヨーロッパの歴史や文化に興味がある人、ファンタジーよりリアリズムを好む人、「弱い主人公の成長」を丁寧に体験したい人、そしてThe Witcher 3やRDR2のように「世界に生きる感覚」を求めている人。逆に、テンポの速いアクションRPGやすぐに爽快感を得たい人、マーカーに従って効率よく進めたい人には、正直なところ合わない可能性が高い。このゲームは急かされることなく、その世界のペースに身を委ねられる人間のためにある。価格帯を考えると、これほど密度の高い体験を提供するゲームはそう多くない。
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スクリーンショット

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