
TUNIC
開発: TUNIC Team発売: Finji¥1,700
アクションアドベンチャーRPG
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
「言葉がわからなくても、前に進める」——TUNICをひと言で表すなら、そういうゲームだ。主人公はちいさなキツネ。剣も盾も持ち方を誰も教えてくれない。説明書はあるが、書かれた文字は読めない。それでも、ページをめくるたびに世界の輪郭が少しずつ見えてくる。TUNICとは、「知らないこと」を楽しむための、21世紀に生まれた冒険譚だ。
ゲームプレイの基本構造は、ゼルダの伝説シリーズに近いクォータービューのアクションアドベンチャーだ。攻撃、回避、盾によるガード——操作系統はシンプルだが、実際に戦ってみると歯ごたえが際立つ。敵の攻撃は苛烈で、スタミナ管理も要求される。序盤から「死んで覚える」を繰り返すことになるが、Dark Soulsのような理不尽さではなく、「次はこうすれば勝てる」という手ごたえが確かにある。ボス戦はどれも個性的で、パターンを把握したときの快感は格別だ。
しかしTUNICの本当の魅力は、戦闘よりも「発見」にある。世界各地に散らばる「説明書のページ」を集めることがこのゲームの核心で、これがとにかく異様に作り込まれている。説明書は架空の文字と記号で書かれており、最初はほぼ意味不明だ。だがページを集め、文脈を読み、試行錯誤するうちに「あ、これはこういう意味だったのか」という瞬間が訪れる。その快感はメトロイドヴァニア的な探索の喜びとも、謎解きゲームの「解けた瞬間」とも違う、独特の感触だ。自分が少しずつこの世界の言語を習得しているような、奇妙な充実感がある。
ビジュアルは一見すると「かわいい」の一言で片付けられそうだが、実際はかなり計算された美しさがある。緑豊かな草原、薄暗い遺跡、霧につつまれた海岸——ロケーションごとに色調と空気感が変わり、世界の広さを肌で感じさせる。キャラクターのアニメーションは愛嬌があって、だからこそ戦闘の緊張感とのギャップが良いスパイスになっている。サウンドトラックはアンビエント寄りの静かな楽曲が多く、探索中の孤独感をそっと後押しする。ボス戦では一転して緊迫感のある音楽に切り替わり、場面の感情をうまく引き出している。
世界観の語り口がまた独特だ。NPCとの会話も読めない文字、アイテムの説明も記号——それなのに、世界に何かが起きたこと、主人公のキツネが何かを取り戻そうとしていることは、プレイしているうちに自然と伝わってくる。テキストによる説明を最小限にしながら、環境と記号で語る設計は、ゲームというメディアの可能性を静かに押し広げている。すべてを理解したとき、「あのシーンはそういうことだったのか」と思い返す体験は、プレイ後もしばらく頭から離れない。
同じく「発見と探索」を軸にするゲームとして、Hollow Knight や Outer Wilds がよく比較対象に挙がる。Hollow KnightはTUNICより戦闘の比重が高く、マップの複雑さも上だ。Outer Wildsはアクション要素がほぼなく、純粋な情報探索ゲームに近い。TUNICはその中間あたりに位置しており、アクションと謎解きの両方を適度なバランスで楽しみたい人にちょうどいい。また、2Dゼルダ(夢をみる島、神々のトライフォース)が好きだった世代には、TUNICのクォータービュー探索の感触が懐かしく、かつ新鮮に映るはずだ。
プレイ時間は一般的に10〜15時間でエンディングを迎える。ただしTUNICには「真のエンディング」が存在し、そちらに至るには世界の謎を深く掘り下げる必要がある。このルートに挑戦したプレイヤーのレビューを見ると、しばしば「人生で一番驚いたゲーム体験だった」という言葉が並ぶ。その意味でトータルのボリュームは20〜30時間程度になることも珍しくなく、謎解き好きなら周回やコンプリートに相当な時間を費やすことになる。
注意点もある。このゲームは意図的に情報を隠しており、序盤はかなり迷子になる設計だ。「次に何をすればいいか」がわからず、彷徨う時間が長い。アクションの難易度も素直で高く、特定のボスに詰まり続けることがある。そのため、難易度調整のオプション(シールドモード、無敵モード等)が標準で用意されている点は親切だが、「難しいゲームを乗り越えたい」という動機がない場合、中盤で失速するリスクはある。
こういう人に強くおすすめしたい。昔のゼルダやメトロイドで「わからないまま進む」探索の喜びを味わった経験がある人、Outer Wildsのような「情報を集めて世界を理解する」構造が好きな人、そして「ゲームに驚かされたい」と思っている人だ。逆に、クエストマーカーとミニマップで明確に誘導してほしい人、アクションゲームに苦手意識がある人は、難易度オプションを積極的に活用しても楽しめるかどうか考えたほうがいい。
¥1,700という価格に対して、この密度の体験が詰まっているゲームはそう多くない。TUNICはAAA大作の派手さはないが、ゲームという形式への深い愛情と、プレイヤーを驚かせようという真剣な意志で作られている。それを感じ取れる人にとって、このちいさなキツネの冒険は、しばらく忘れられない体験になるはずだ。
スクリーンショット











