
Ori and the Will of the Wisps
開発: Moon Studios GmbH発売: Xbox Game Studios¥783
アクション
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
光の粒が宙を舞い、風に揺れる草木が歌い、森の奥から聞こえてくるピアノの旋律が胸を締め付ける——『Ori and the Will of the Wisps』をひと言で表すなら、「遊べる絵本」ではなく「遊べる感情体験」だと思う。美しいだけのゲームは世の中にたくさんある。だがこの作品は、美しさそのものがゲームプレイと溶け合い、プレイヤーの感情を直接操作してくる。それが他の追随を許さない理由だ。
操作の気持ちよさは前作『Ori and the Blind Forest』からさらに磨き上げられており、まるで空気を泳ぐように動けるようになった。壁を蹴り、宙を舞い、敵の攻撃を踏み台にして更に高く跳ぶ。その一連の動作が指に馴染んでくると、マップを駆け抜けること自体が快楽になる。特にスピリットダッシュとエアリアルコンボを組み合わせた高速移動は、メトロイドヴァニアというジャンルの中でも随一の爽快感を誇る。コントローラーの振動まで含めた「手触り」の設計が極めて精緻で、着地の瞬間に伝わるわずかな振動一つとっても、開発チームの執念が感じられる。
戦闘は前作と比べて大幅に強化された。前作ではほぼ移動と回避だけで乗り越えられた戦いが、今作では剣、弓、爆弾など多彩なスキルを組み合わせるアクティブな戦闘になっている。最初は「なんで急にアクションゲームになったんだ」と戸惑うかもしれないが、スキルを解放してビルドを組み始めると、自分だけの戦い方が生まれてくる。特にボス戦は演出と難易度のバランスが絶妙で、何度倒されても「もう一回やってみよう」と思わせる設計になっている。理不尽さではなく、学習と達成の繰り返しで前進する感覚だ。
マップの作りはオープンワールドに近い構造になっており、探索の自由度が上がった。水中エリア、砂漠地帯、荒廃した遺跡など、各バイオームが独自のビジュアルと仕掛けを持ち、「次は何が待っているんだろう」という期待感を途切れさせない。隠し部屋、収集アイテム、ルーマープと呼ばれるサイドクエストなど、寄り道コンテンツも充実しており、メインストーリーを追うだけでなく、隅々まで世界を探索したくなる。
グラフィックについては、もはや「美しい」という言葉が陳腐に感じられるレベルだ。2Dゲームとは思えない光と影の表現、風に揺れる植物の動き、水面の反射、夕暮れの空のグラデーション——これらすべてが手描きのアニメーションとして動いている。スクリーンショットを撮るたびに壁紙にしたくなる瞬間が何十回もある。そしてGareth Cooker氏による音楽は、視覚表現と完全に同期して感情を増幅させる。森の静けさの中で流れる繊細なピアノ、緊迫した戦闘で高まるオーケストラ、そして物語の山場で炸裂するコーラス——ゲーム音楽として傑出した仕事だ。
ストーリーはネタバレを避けながら言うと、前作から続くオリの物語の続章であり、喪失・成長・絆というテーマが自然の摂理と絡み合いながら展開する。説明過剰なテキストに頼らず、キャラクターの動き、表情、そして音楽だけで感情を伝えてくる演出手法は、ゲームというメディアの表現力の高さを再認識させてくれる。感情移入できるキャラクターたちの運命に、素直に心が動く。
比較という点では、同じメトロイドヴァニアジャンルの『Hollow Knight』と並べて語られることが多い。どちらも高品質な傑作だが、方向性は真逆に近い。『Hollow Knight』が「難しく、暗く、謎に満ちた孤独な旅」だとすれば、本作は「流れるように美しく、感情的に豊かで、爽快感重視の旅」だ。難易度はHollow Knightの方が全体的に高く、死を繰り返しながら攻略していく手応えを求める人にはHollow Knightが向いている。一方で、美しい世界を颯爽と駆け抜けながら物語に没入したい人は本作を選ぶべきだ。『Celeste』との比較では、精密なプラットフォーミングという点で共通するが、本作の方が探索要素が強く、アクションRPG的な成長システムがある。
プレイ時間は、メインストーリーのみなら10〜12時間程度。収集要素や隠しエリアをすべて回収しようとすると15〜20時間以上かかる。難易度はイージーからハードまで選択でき、初心者でも楽しめる設計になっている。ただし、一部のチャレンジルームや精霊の試練と呼ばれるタイムアタックコンテンツは、アクションゲームに慣れたプレイヤーでも手応えを感じる難度だ。周回要素はほぼなく、実績コンプリートを目指すか、スピードランに挑むかがエンドコンテンツになる。
気になる点を正直に言えば、前作に比べてストーリーの焦点がやや散漫に感じる瞬間がある。多くのNPCと会話しながら進むRPG的な展開は世界への愛着を深める一方で、前作の「オリとナルの純粋な二者関係」が持っていたシンプルな感情的パンチが薄れている印象だ。また、戦闘が増えたことで、探索とジャンプの純粋な気持ちよさを求めていた前作ファンには違和感を覚えさせるかもしれない。
強くおすすめしたいのは、アクションゲームに多少の慣れがあり、美しい世界観と感情的なストーリーを求めている人だ。メトロイドヴァニア未経験者の入門作としても、このジャンルの中でも操作感が特に優しく設計されており、適している。逆に、ソウルライクのような高難度に快感を見出す人や、テキスト量の多いRPGで世界観を深堀りしたい人には物足りないかもしれない。
¥783という価格は、このゲームの品質に対して異常なほど安い。セール価格ではなく、これが定価だ。10時間以上にわたって視覚・聴覚・感情に訴えかけてくる体験として考えると、映画一本分の値段にも満たない。コストパフォーマンスという言葉がこれほど似合うゲームもそうない。
スクリーンショット











