
Portal 2
開発: Valve発売: Valve¥240
アクションアドベンチャー
Steam レビュー
圧倒的に好評
PlayNext レビュー
「考えることが、このゲームの全てだ」と言うと大げさに聞こえるかもしれないが、Portal 2 をプレイし終えた後には、その言葉の意味が骨身に染みてわかる。銃を撃つゲームでも、敵を倒すゲームでもない。ただ、壁に穴を開け、その穴を別の壁に開け、その2点をつなぐことで不可能を可能にする。それだけのことで、これほどまでに頭を使わされ、笑わされ、感動させられるとは思わなかった。
ゲームの仕組みはシンプルだ。ポータルガン1丁で、オレンジと青の2つのポータルを任意の壁面に射出できる。この2点は空間的に接続されており、片方に飛び込めばもう片方から出てくる。速度は保存されるため、高いところから落下してポータルに飛び込めば、水平方向に高速で射出されて遠くまで飛べる。この「勢いの保存」という物理法則がパズルの核心であり、プレイヤーは重力・速度・空間のつながりを頭の中で同時に計算しながら活路を見出していく。
最初の数チャプターは丁寧なチュートリアルを兼ねており、「ポータルってこういうものか」とゆっくり理解できる設計になっている。しかし中盤以降、パズルはじわじわと複雑さを増していく。ライトブリッジ(光の橋)、エキサイションレール(高速移動レール)、ハードライトサーフェス、スフィア(各種立方体)、ゲルと呼ばれる液体(加速・反発・削除の3種)など、新しいギミックが追加されるたびに思考の次元が広がる。「あれ、これってこう使えばいいんじゃ……」という閃きの瞬間が何度も訪れ、その度に小さな達成感が積み重なっていく。詰まっても「理不尽だ」とは感じにくい。「もう一度よく見れば、必ずわかる」という確信を持たせてくれる絶妙な難易度調整がなされている。
操作感は洗練されていて、ストレスがない。FPS視点での移動はスムーズで、酔いやすい人向けの設定も用意されている。ポータルの射出は直感的で、試行錯誤のサイクルが速い。「失敗してもすぐやり直せる」設計がパズルゲームとして重要な点だが、Portal 2 はそれを完璧に実現している。解法が正しければ数秒でクリアできるルームも多く、「わかった!」という瞬間から答え合わせまでのテンポが気持ちいい。
世界観とビジュアルについて言えば、廃墟と最先端が混在する Aperture Science 施設の美術設計が唯一無二だ。錆びたパイプ、崩れかけたコンクリート壁、その奥に広がる巨大な空洞——1950年代から現代まで、施設の歴史が地層のように積み重なっている。音楽は静かで機能的なBGMが多いが、特定の場面では壮大なオーケストラが流れ、そのギャップが演出として効いている。そしてエンドクレジットの楽曲は、このゲームを愛した人なら忘れることができないはずだ。
ストーリーは語りすぎたくないが、前作からの因縁が丁寧に描かれ、新キャラクターも魅力的に登場する。特筆すべきはAIキャラクター GLaDOS と Wheatley の会話劇で、皮肉とユーモアと哀愁が絶妙に混ざり合い、パズルを解きながらついつい耳を傾けてしまう。吹替ではなく字幕でプレイしても、翻訳の質が高く笑えるポイントは十分伝わる。「ゲームのストーリーなんてどうせおまけ」と思っているプレイヤーほど、裏切られる作品だ。
比較対象を挙げるなら、同じパズルゲームの The Witness や The Talos Principle とは方向性が異なる。あれらが静かな孤独の中で哲学的に問い続ける体験だとすれば、Portal 2 は饒舌で、喜劇的で、エモーショナルだ。Half-Life シリーズと同じ Valve の作品だが、世界の暗さの質が違う。Portal 2 の暗さはあくまで笑えるブラックユーモアの範囲に収まっており、重苦しさを引きずらない。
プレイ時間の目安はシングルプレイで約8〜12時間。パズルに詰まる頻度によって前後するが、ストーリーのテンポが良いため中だるみをほとんど感じない。加えてオンライン・ローカルどちらでも遊べる協力プレイモードが実質的にもう1本分のボリュームとして用意されており、こちらでは2人のロボットを操りより複雑なパズルを共同解決する。フレンドと「あっ、それ!」「いや、こっちじゃない!」と言い合いながら解く体験は、シングルとはまた別の楽しさがある。Steam ワークショップには有志製作のステージが大量に公開されており、本編クリア後も遊び続けることができる。
注意点を挙げるなら、3D酔いする人は最初の30分が辛いかもしれない。設定でFOVを調整したり、ポータル移動直後にカメラを動かさないようにする工夫が必要な場合がある。また、完全な謎解き嫌いには向かない。ヒントなしで自力で考えることを楽しめる人向けの作品であり、攻略を見ながら進めると達成感が半減する。アクション要素はほとんどなく、戦闘でスカッとしたいプレイヤーには物足りない可能性がある。
こういう人に強くおすすめしたい——「最近ゲームをやってない」「ゲームに詳しくない」という人ほど刺さる作品だ。操作がシンプルで、暴力描写もなく、しかし頭を使う喜びと感動的なラストを味わえる。逆にがっつりアクションやRPGをやり込みたい人、謎解きが苦手な人、オープンワールドの自由度を求める人には合わないかもしれない。
¥240 という価格は、率直に言って安すぎる。これほど丁寧に作られた体験を、コーヒー1杯分以下で手に入れられる事実が信じられないくらいだ。未プレイなら今すぐ買って損はない。
スクリーンショット











