
Pathfinder: Wrath of the Righteous - Enhanced Edition
開発: Owlcat Games発売: META Publishing¥779
アクションアドベンチャーインディーRPGストラテジー
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
「悪魔に蹂躙された土地を解放し、神話的英雄として覚醒する」——このキャッチコピーだけ読むと、よくあるファンタジーRPGの一本に聞こえるかもしれない。しかし『Pathfinder: Wrath of the Righteous』が他のRPGと決定的に異なるのは、プレイヤーへの要求水準の高さだ。クラス選択、能力値配分、フィート選択、呪文スロット管理——キャラクター作成だけで数十分を費やすことが珍しくなく、それでも「まだ足りない」と感じるほど選択肢が広がっている。これはカジュアルゲーマーを選別するゲームであり、同時にゲームに深く潜りたい人間を熱狂させる設計でもある。
ゲームの根幹はテーブルトップRPG「Pathfinder」のルールセットに基づいたターン制(もしくはリアルタイムウィズポーズ)の戦術バトルだ。最大6人のパーティを編成し、呪文、近接攻撃、バフ・デバフの組み合わせで敵を攻略していく。操作の手触りは重厚そのもので、1回の戦闘に複数の判断を要求される。「この敵にはまず魔法防護を下げてから攻撃魔法を叩き込む」「このボスは混乱耐性が高いから別の戦略が必要だ」といった試行錯誤が自然に生まれる。テンポはゆっくりだが、それは問題ではなく仕様だ。考えることそのものが楽しいゲームなのだから。
本作最大の特徴が「神話道(Mythic Path)」システムだ。天使、アジマール、魔鬼、トリックスター……9種類以上の神話的存在への道を選ぶことで、キャラクターの方向性が根本から変わる。単なるスキルツリーではなく、世界観への関わり方、NPCとの対話、一部のルートではゲームの結末すら変容する。「魔鬼の道を歩みながら正義を貫く」といった相反する選択も可能で、プレイヤーのロールプレイ欲求を高いレベルで満たしてくれる。
ビジュアルは2Dアイソメトリック視点で、環境はオーソドックスだが手書き風のテクスチャが温かみを与えている。特に魔界(ワールドワウンド)の腐敗した荒野と、廃墟となった都市のコントラストが印象的で、「人類の踏みとどまる最後の砦」という設定の重さを視覚的に補強している。サウンドトラックは壮大なオーケストラが中心で、戦闘のテンションを着実に高めてくれる。声優陣も充実しており、主要キャラクターはすべて英語フルボイスだ。会話量は膨大で、テキストを読むだけでも相当なボリュームになる。
ストーリーは悪魔の侵攻に立ち向かう十字軍の指揮官として、「第五次十字軍」を率いるという大きな枠組みを持つ。個人の英雄譚に留まらず、兵站、政治、仲間たちとの信頼関係まで描かれるスケールの大きさが魅力だ。仲間キャラクターはそれぞれ深い背景を持ち、コンパニオンクエストを通じて人間関係が変化していく。善悪の二項対立に収まらない選択肢も多く、「正しい答えが明確ではないジレンマ」を繰り返し突きつけてくる。
同ジャンルで比較すると、『Baldur's Gate 3』がアクセシビリティと映像美で現代的な洗練を極めたとすれば、本作はシステムの奥行きと情報密度を追求した「古典的CRPG」の系譜に近い。『Pillars of Eternity』や前作『Pathfinder: Kingmaker』と並べると理解しやすいが、神話道システムのおかげで本作の方が「自分だけの英雄」を作る満足感は上回っている。クラス数の多さは『BG3』の比ではなく、同じ職業でもサブクラスや取得フィートの組み合わせで全く異なるビルドが成立する。
プレイ時間は通常ルートでも80〜120時間、サイドクエストを丁寧にこなすと150時間を超える。神話道ごとに展開が変わるため、2週目以降も新鮮さは持続する。難易度調整が細かく設定できる点は親切で、「ストーリーを楽しみたいだけ」なら最低難易度でも十分だ。一方でDLCを含む完全版相当のコンテンツが¥779という価格は、時間単価で考えると破格に安い。
注意点として、バグの多さはリリース当初から指摘されていた。Enhanced Editionで大幅に改善されているが、特定のクエストやビルドで予期せぬ動作が起きることは今も報告されている。また序盤の情報量は圧倒的で、チュートリアルを読み飛ばすと詰まるポイントが出やすい。日本語ローカライズは存在しないため、テキスト量の多さを考えると英語への抵抗感が大きい人には向かない。
コンプレックスなシステムを楽しめるRPGファン、ロールプレイと物語の深みを求めるプレイヤー、「ビルド研究に何時間でも使える」タイプの人には強くおすすめする。反対に、テンポの速い戦闘やシンプルな成長システムを好む人、英語テキストに慣れていない人、バグに敏感な人には合わないかもしれない。¥779という価格のリスクを考えれば、少しでも気になるなら試す価値は十分にある。
スクリーンショット











