Tyranny

Tyranny

開発: Obsidian Entertainment発売: Paradox Interactive¥997
アドベンチャーRPG

Steam レビュー

非常に好評

PlayNext レビュー

悪の帝国に仕える「裁定者」として世界を征服する側に立つ——Tyranny はその一点だけで、無数のRPGの中でも唯一無二の立ち位置を確立している。主人公は正義の勇者でも反乱軍のヒーローでもない。圧倒的な力を持つ覇者カイロスの代理人として、征服された土地に秩序と恐怖を植え付ける役人だ。「悪の組織を倒す」ではなく「悪の組織の一員として世界を動かす」という逆転の発想が、プレイヤーに全く新しい感覚をもたらす。 ゲームの冒頭、いわゆる「コンクエスト」フェイズと呼ばれるシーケンスがある。これはキャラクターメイキングを兼ねたプロローグで、過去にどの勢力を支援したか、どんな命令を下したかを選択式で決めていく。このフェイズで決めた選択が、本編に入った瞬間から世界の状態として反映される。特定の村が焼かれていたり、ある派閥があなたに好意を持っていたり、逆に敵意を剥き出しにしてきたりする。プレイを始める前から「あなたはすでに歴史を作った」という演出が、世界への没入感を強烈に後押しする。 戦闘はリアルタイム+ポーズのオーソドックスなスタイルで、Pillars of Eternity や Baldur's Gate に近い。パーティは最大4人で、各キャラクターのアビリティを適宜ポーズして指示する。テンポは中程度で、ゆっくり戦術を組み立てたいプレイヤーにも、テンポよく進めたいプレイヤーにもある程度対応している。ただ本作の真骨頂は戦闘よりも圧倒的に「対話」にある。選択肢の分岐数と深度が凄まじく、ひとつの会話シーンで使えるスキルチェック(説得・脅迫・欺瞞など)が複数絡み合い、プレイヤーの積み上げてきたステータスや過去の選択によって使える台詞が変化する。「俺が誰だか知ってるか」と凄むだけで扉が開く瞬間の快感は、このゲームならではだ。 ビジュアルは2.5D俯瞰視点の手書き風背景で、Pillars of Eternity と同系統のアートスタイル。荒廃した大陸を覆う「嵐の壁」と呼ばれる巨大な魔法の障壁や、腐敗した城塞、枯れた農地など、征服後の世界の重苦しい美しさが丁寧に描き込まれている。華やかさはないが、廃墟と秩序が混在した独特のムードを視覚的に伝えることに成功している。BGMは重厚なオーケストラと民族楽器が融合したスコアで、世界の陰鬱さと荘厳さを両立させている。ボイスアクティングも要所で入っており、特に主要NPCの台詞は感情の細かいニュアンスまで丁寧に演じられている。 世界観は「カイロスという絶対的な支配者がすでに世界を征服した後」という設定から始まる。つまり光と闇の戦いはすでに闇が勝利しており、プレイヤーはその秩序の中でどう振る舞うかを問われる。抵抗勢力との交渉、配下の派閥同士の権力争い、そして征服された民の怒りや恐怖——道徳的にシンプルな答えを出させてくれない状況が次々と積み重なる。「悪に仕えながらも自分なりの正義を貫く」「完全に腐敗する」「体制を内側から崩す」など、プレイヤーが目指す方向によってエンディングが大きく分岐する。 Pillars of Eternity と比較するなら、本作はより「対話と選択」に絞ったデザインで、戦闘の比重が軽い。Baldur's Gate 2 と比べると世界規模は小さいが、ひとつひとつの選択の重みは勝るとも劣らない。Dragon Age: Origins と似た「灰色の道徳観」を扱いつつ、本作はその極端な形——プレイヤー自身が悪の代理人である——をより徹底している点が差別化ポイントだ。 プレイ時間は1周あたり15〜25時間程度。RPGとしてはやや短く感じるかもしれないが、これは意図的な設計で、周回前提のゲームバランスになっている。異なる派閥を支援する、コンクエストフェイズで別の選択をする、スキル構成を変えて使える台詞の幅を広げるなど、周回ごとに体験がかなり変化する。全エンディングを回収しようとすると50時間以上は軽く溶ける。 注意点を挙げるとすれば、まず「長大な会話テキストを読む意欲がないと厳しい」点だ。本作はほとんどの情報をテキストで伝える古典的なCRPGで、スキップしながらプレイすると話の繋がりが分からなくなる。また道徳的に割り切れない選択が連続するため、「明確な正解を選びたい」タイプのプレイヤーには居心地が悪いかもしれない。日本語ローカライズは存在しないため、英語テキストへの抵抗感も正直に言っておく必要がある。 こういう人には強くおすすめしたい——CRPGが好きで「選択の重みを感じたい」と思っているプレイヤー、勧善懲悪ではない複雑な物語を楽しめる人、悪役視点の物語や「システムの内側から動く」権謀術数が好きな人。逆に、アクション要素や爽快感を求める人、英語テキストが苦手な人、道徳的に正しい選択肢を選び続けたい人には向かない。 ¥997 という価格で、これだけ密度の高い選択体験と独自の世界観が手に入ることを考えると、CRPGファンにとっては間違いなく買いの一本だ。善良な勇者に飽き、少し捻じれた物語を求めているなら、Tyranny はその渇望に応えてくれる。
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スクリーンショット

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