
Pillars of Eternity II: Deadfire
開発: Obsidian Entertainment発売: Versus Evil¥990
RPG
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
広大な海を舞台にした航海と、神を追いかける壮大な旅。「Pillars of Eternity II: Deadfire」が他のRPGと一線を画すのは、プレイヤーが単なる英雄ではなく、自分の船を持つ「船長」として世界に立つことから始まるからだ。風に揺れる帆を背に、多島海「デッドファイア」の未知の島々を探索しながら、背後には神という存在を追いかけるという異色の設定。「神を追う」という行為がいかに無謀で、それでも引き返せない理由がどこにあるのか——プレイを始めると、そのテーマの重さがじわじわと染み込んでくる。
ゲームプレイの軸は、前作「Pillars of Eternity」を踏襲したリアルタイム・ウィズ・ポーズ戦闘だ。戦闘中いつでもスペースキーで時間を止め、各キャラクターへの指示を落ち着いて組み立てられる。ただしバージョン5.0以降はターン制モードも実装されており、「Divinity: Original Sin 2」のような感覚で遊ぶことも可能になった。これは大きい。かつてリアルタイム戦闘を苦手として前作を途中で諦めたプレイヤーにとって、本作への入口が一つ増えたことを意味する。戦闘の手触りはじっくりとしたもので、瞬発的な反射神経より戦略的な思考と事前準備が求められる。スキルやアビリティの組み合わせによるシナジー探しがやり込みの核心であり、「このクラスとあのクラスを掛け合わせたらどうなる?」という好奇心がセーブデータを増殖させていく。
航海システムは本作ならではの独自要素だ。自分の船に名前をつけ、乗組員を雇い、補給物資を管理しながら次の目的地へ向かう。海上では突然の嵐、海賊との遭遇、謎の漂流船など様々なイベントが待ち受けており、テキストADV的な選択肢で対処していく。船同士の砲撃戦もあり、これはこれで戦略性があって面白い。ただし航海パートのテキスト量は膨大で、すべて英語ベースの翻訳文を読み続けることになる点は覚悟が必要だ。ゲームは日本語ローカライズされており、翻訳品質も高いが、世界観用語や固有名詞が多く、最初の数時間はどうしても読解に時間がかかる。
ビジュアルは高解像度の2Dプリレンダード背景に3Dキャラクターを組み合わせたスタイルで、「Baldur's Gate」シリーズや前作と同系譜の美学を持つ。デッドファイアの熱帯の島々、青緑に輝く海、朽ちた石造りの遺跡——これらの景観は静止画のような完成度で描かれており、何時間見ていても飽きが来ない。音楽はBjörn Lynneによる壮大なオーケストラスコアで、特に海上を漂うシーンでの音楽は旅情を強く掻き立てる。キャラクターボイスは英語のみだが、主要キャラクターのセリフはフルボイスで、演技の質も高い。
世界観の深さについては、Obsidian Entertainmentがこれまで積み上げてきたすべての努力が結実していると言っていい。デッドファイアには複数の勢力が利権を争っており、プレイヤーはその間を渡り歩きながら関係を構築したり壊したりする。コンパニオンキャラクターたちはそれぞれ固有のクエストと複雑な背景を持ち、主人公との会話で少しずつ本音を明かしていく。彼らの動機は単純な善悪では語れず、プレイヤーが特定の選択をすると仲間から批判されることもある。「正解のない対話」が随所に仕掛けられており、道徳的な判断を求められるたびに立ち止まって考えさせられる。
「Divinity: Original Sin 2」と比較されることが多いが、両者の方向性はかなり異なる。Divinityが戦術パズルと対戦的なシステムを重視するのに対し、Deadfireはナラティブと選択の自由度を核に置く。「自分がどんな人物として振る舞うか」がゲームの深みを決定し、数値や戦闘の達成感より物語の中での手応えを求めるプレイヤーに向いている。「Tyranny」や「Planescape: Torment」に近い哲学的な重さがある。
プレイ時間はメインストーリーだけなら30〜40時間程度だが、すべてのサイドクエストや仲間クエストを丁寧に追えば軽く80〜100時間を超える。クラスとサブクラスの掛け合わせが膨大なため、二周目以降は全く異なるビルドで別の会話選択を試すことで新鮮さが続く。DLCも三本配信されており、本編クリア後のエンドコンテンツとしても機能する。
正直に言っておくと、このゲームには学習コストがある。前作プレイ経験がなくても始められるが、世界観の用語や前作の登場人物への言及が多く、「ウォッチャー」「エヴェルタイム」といった固有概念をゲーム内のコーデックス(百科事典)で調べながら進む必要がある。序盤のチュートリアルは必ずしも丁寧ではなく、ステータスとアビリティの意味を理解するまでに数時間かかる場合がある。リアルタイム戦闘に慣れないうちは難易度を下げることを躊躇わないでほしい。このゲームの真価は戦闘の難しさではなく、選択と語りの豊かさにある。
「じっくり読んで考えるRPGがしたい」「コンパニオンとの関係を深めながら世界観に没入したい」「オープンワールドよりも密度の高い物語体験を求めている」——そういう人にとって、Deadfireは990円という価格が信じられないほどの体験を提供してくれる。逆に、アクション性の高いRPGやテンポの速い戦闘を求めているなら、このゲームのペースに物足りなさを感じるかもしれない。前作を知らなくても楽しめるとはいえ、「Pillars of Eternity」を先にプレイしてから本作に来れば、その感動は倍になる。時間をかけて世界に馴染む覚悟があるなら、デッドファイアの海は確かにあなたを待っている。
スクリーンショット











