
Marvel’s Spider-Man: Miles Morales
開発: Insomniac Games発売: PlayStation Publishing LLC¥2,596
アクションアドベンチャー
PlayNext レビュー
スパイダーマンになるとはどういうことか——そのひとつの答えが、このゲームには詰まっている。高層ビルの谷間を縫うようにスウィングし、壁を駆け上がり、敵の群れの中に飛び込む。『Marvel's Spider-Man: Miles Morales』は、前作『Marvel's Spider-Man Remastered』が築いたウェブスウィングの快感をそのままに、「マイルズ・モラレス」というまったく新しい主人公の物語で、プレイヤーに「もう一人のスパイダーマン」を体感させてくれる作品だ。
ゲームプレイの核心は、前作から引き継がれたウェブスウィングと近接コンバットに、マイルズ固有の能力が加わった点にある。「ヴェノムパワー」と呼ばれる生体電気攻撃は、敵をしびれさせながらコンボをつないでいく爽快感を生み出し、「カモフラージュ(透明化)」はステルスアプローチを一気に選択肢に加える。前作のピーター・パーカーはどちらかといえば手数と道具の多さで戦うタイプだったが、マイルズは「一撃の重さ」と「瞬発的な切り替えし」が持ち味だ。ヴェノムフィニッシャーで複数の敵を一瞬で無力化する瞬間の気持ちよさは、慣れてくるほど中毒性が増していく。
操作のテンポは非常に気持ちよく設定されており、戦闘とスウィングの切り替えがほぼシームレス。「倒したらすぐ逃げる」「高所から急降下して叩きつける」といった動きが直感的に決まるため、戦闘が単調になりにくい。チャレンジミッションやタイムアタック系のサイドコンテンツも充実しており、コンボを磨く場として機能している。ただし、前作と比べるとガジェット(道具)の種類は絞られているため、ビルドのカスタマイズ幅はやや狭い印象もある。
ビジュアル面では、ニューヨークの冬の街並みが圧倒的だ。雪の積もったハーレムの屋根、クリスマスシーズンのイルミネーション、夜に光るタイムズスクエア——PC版では高解像度・高フレームレートで描かれるこの景色の中を飛ぶだけで、それ自体がエンターテインメントになっている。マイルズのスーツも複数種類があり、コミック原作リスペクトのデザインから本作オリジナルまで揃っている。サウンドトラックはヒップホップとR&Bの要素を大胆に取り入れており、前作のオーケストラ主体の音楽とは一線を画す。マイルズのキャラクターそのものが音楽に乗っているような感覚で、スウィング中にBGMがかかる演出は特に印象的だ。
物語は「自分だけの街を守る」というシンプルかつ強いテーマで一本道に進む。ピーター不在の中、ひとりで街を守ることへのプレッシャー、家族や友人との関係、そして敵対する組織の思惑——それらが交差しながら、マイルズが「本当のスパイダーマン」へと成長していく姿を描く。大きな驚きよりも「感情的な着地点の確かさ」が本作の強みで、エンディングに向かうにつれて物語の密度が上がっていく構成は見事だ。ネタバレになるので詳しくは書かないが、後半の展開はプレイして損のない体験だと断言できる。
同ジャンルのアクションアドベンチャーと比べると、『バットマン: アーカムナイト』や同シリーズ前作と比較されることが多い。アーカム系との違いは「空中での機動力」と「スウィングの自由度」にある。バットマンは地上とグライドが中心だが、スパイダーマンはビルとビルの間を本当の意味で"飛ぶ"。この3次元的な移動の快感は他のゲームでなかなか代替できない。前作との違いという意味では、本作はボリュームが小さめ(メインストーリーで6〜8時間程度)の代わりに、密度と演出の完成度が高い。「短編映画を一本見た」ような満足感がある。
プレイ時間の目安としては、メインストーリーのみなら6〜8時間、サイドミッションやコレクタブルを含めると15〜20時間前後が目安となる。トロフィーコンプリートやスーツ・改造の全解放を目指すとさらに伸びるが、いわゆる"無限に遊べるエンドコンテンツ"はない。一周で完結する作品と捉えたほうがよい。
注意点として、まず前作『Marvel's Spider-Man Remastered』のプレイ経験がないと、一部のキャラクター関係や世界観の説明が薄く感じる可能性がある。完全な独立作品として遊べるよう設計されてはいるが、前作を先にプレイするとより深く楽しめる。また、ボリューム感に対する価格の感じ方は人によって異なるため、セール時の購入がより満足度を高めるかもしれない。PCゲームとしての最適化は概ね良好だが、グラフィック設定次第で要求スペックが上がる点には注意したい。
「一つの完成されたヒーロー体験を短時間で楽しみたい」「映画的な感動とゲームの爽快感を両方求めている」というプレイヤーには強くおすすめできる。特に、スウィング移動でニューヨークを飛び回ることへの憧れがある人、マイルズ・モラレスという新世代のスパイダーマンに興味がある人にとっては、これ以上ない入門作になるだろう。逆に、数百時間規模のオープンワールドを求めている人や、濃いビルドカスタマイズを期待している人には物足りなさが残るかもしれない。「短くても濃い体験」——それが本作の本質であり、最大の魅力だ。
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