The Witcher 2: Assassins of Kings Enhanced Edition

The Witcher 2: Assassins of Kings Enhanced Edition

開発: CD PROJEKT RED発売: CD PROJEKT RED¥302
RPG

Steam レビュー

非常に好評

PlayNext レビュー

選択の重さで息が詰まる——そんな体験をRPGに求めているなら、『ウィッチャー2 王の暗殺者』は間違いなくあなたのための作品だ。「善と悪の二択」という甘い幻想を捨て、どちらを選んでも血と後悔が残る政治的泥沼に放り込まれる。2011年にPC向けに発売されたこの作品は、15年近く経った今もなお「物語の密度」という一点においてRPGの頂点に君臨し続けている。 ゲームの中核にあるのは、ゲラルト・オブ・リヴィアという怪物退治師(ウィッチャー)の視点を通じた政治サスペンスだ。王殺しの汚名を着せられたゲラルトが、自らの無実を証明しながら黒幕を追う——大筋だけ見ればシンプルだが、その過程で出会う選択肢は一切「正解」を教えてくれない。エルフの反乱軍を支持すれば人間の市民が虐殺され、帝国の密偵に手を貸せば自由を求める民が弾圧される。ゲーム内のすべての勢力が自分の正義を持って動いており、プレイヤーはその歯車の一つとして翻弄される感覚がある。 操作の手触りについて正直に言えば、前作からの変化に戸惑う時間は確かにある。リアルタイム戦闘は「転がる→斬る→また転がる」の繰り返しになりがちで、序盤の難易度はかなり高め。特にチュートリアル直後のボス戦で一方的にやられて投げ出したプレイヤーも少なくないはずだ。しかし、ゲラルトの使う「印」と呼ばれる魔法を組み合わせ、錬金術で戦闘前に準備を整えるルーティンを掴むと、戦闘そのものが別のゲームのように変わる。敵の動きを炎で制限しながら側面に回り込む立ち回りは、慣れると快感に変わる。難易度設定は柔軟で、物語を楽しむことに集中したければ「イージー」でも何ら恥ずかしくない。 視覚的な完成度は2011年当時としては衝撃的なレベルだったが、Enhanced Edition の今でも要所で息を飲む景色がある。フロッタースト峡谷の朝霧、ヴェルゲン要塞の薄暗い石造りの路地、白い霧の中に浮かぶ沼地の集落——それぞれのチャプターが異なる色彩と空気感を持ち、旅している実感を与えてくれる。BGMは控えめながら場面に溶け込むスコアで、ケルト音楽を基調としたアレンジが中世スラブ的な世界観を引き締めている。日本語ローカライズは完備されており、ボイスの演技も水準以上だ。 この作品が突き抜けているのは、チャプター2の構造にある。ゲームのほぼ中間地点で、プレイヤーは全く異なる2つのルートに分岐し、それぞれが独立したボリュームで展開される。一方のルートでは反乱を支援し、もう一方では帝国に協力する。同じ世界の同じ出来事を、対立する側から体験するこの構造は他のRPGでほとんど見られない。1周目で見た結末が、2周目で別ルートを歩むとき全く違う意味を持って迫ってくる。 同ジャンルの『Dragon Age: Origins』と比較すると、キャラクターの感情的な深みではDAOに軍配が上がるかもしれないが、世界の政治的なリアリティとシナリオの密度ではウィッチャー2が圧倒している。『ウィッチャー3』の前日譚として位置づけられているため、3を先にプレイした人が過去作を追いかけて本作に来るケースも多い。その場合でも十分に楽しめるが、ウィッチャー3のゲルニカ的な明るさに比べ、本作はより暗く陰鬱なトーンで一貫している点は覚悟が必要だ。 プレイ時間は1周あたり25〜35時間が目安で、サイドクエストをしっかりこなせば40時間近くになる。前述の2ルート分岐により、2周目も新鮮に遊べる。エンドコンテンツ的なやり込み要素は多くないが、Steam実績のコンプリートには両ルートのクリアが必須なので、実績収集派にとっても2周の動機は十分にある。 人を選ぶポイントも明確に伝えておきたい。まず戦闘は慣れるまで理不尽に感じるほど難しく、アクションゲームが苦手な人には障壁になりえる。また、物語の背景——ウィッチャーの世界観、前作との繋がり、登場人物の関係性——を前提として進む場面が多く、初見では「誰この人?」となる固有名詞の嵐に圧倒されることもある。そして、道徳的に明快な結末や感情的なカタルシスを求めるタイプのプレイヤーには、この作品のビターな余韻は合わないかもしれない。 強くおすすめできるのは、「ゲームで政治小説を読みたい」人だ。勢力間の駆け引き、裏切りと同盟、歴史の歪曲と真実の断片を拾い集める体験を求めるなら、これ以上の作品はそうない。また、ウィッチャー3をプレイして世界観に惹かれた人が、ゲラルトとトリスの関係性やウィッチャー3の伏線を確認しに来るにも最適だ。現在の価格はわずか302円であり、この密度のシナリオをその値段で体験できる機会はほとんど奇跡に近い。 逆に合わない可能性が高いのは、探索のオープンワールド性やアイテム収集のサイクルをRPGの楽しみとしている人だ。ウィッチャー2は直線的なゲームであり、各チャプターのエリアは狭く限定されている。自由な旅の感覚よりも、舞台劇のように場面が切り替わっていく構成で、その制約の中に密度を詰め込む設計思想だ。広大な世界を歩き回りたい人には、素直にウィッチャー3を勧める。 ただ、物語の充実度と選択の重みという点においては、本作を超えるRPGを探すほうが難しい。302円のゲームとは思えない重さの体験が、そこにある。
Steam ストアで見る →

スクリーンショット

The Witcher 2: Assassins of Kings Enhanced Edition screenshot 1The Witcher 2: Assassins of Kings Enhanced Edition screenshot 2The Witcher 2: Assassins of Kings Enhanced Edition screenshot 3The Witcher 2: Assassins of Kings Enhanced Edition screenshot 4The Witcher 2: Assassins of Kings Enhanced Edition screenshot 5The Witcher 2: Assassins of Kings Enhanced Edition screenshot 6

似ているゲーム