
Screamer
開発: Milestone S.r.l.発売: Milestone S.r.l.¥7,590
PlayNext レビュー
アクセルを踏み込んだ瞬間、車体が路面を喰いちぎるような加速感がコントローラーを通じて伝わってくる。Milestoneが送り出す『Screamer』は、単なるスピードの競争ではなく、怒りと野心と復讐が渦巻くレースの世界を舞台にした、感情の激突を体験するゲームだ。ハンドルを握る者それぞれが胸に抱える動機——栄光を求める者、力を証明したい者、奪われた何かを取り戻そうとする者——がコース上でぶつかり合う。ただ「速く走る」だけでは終わらない、剥き出しの人間ドラマがそこにある。
走行の手触りは、競技レースゲームとしての骨格をしっかりと持ちながらも、独特のアクの強さが同居している。コーナーでの荷重移動、ブレーキングポイントの読み合い、といった純粋な技術要素は当然あるが、このゲームが他と一線を画すのは「戦闘」という要素が織り込まれている点だ。接触、割り込み、心理的な圧迫——レースはいつしか相手の意志を折るための闘争へと変貌する。プレイ中は常に二つのことを同時に考えさせられる。最速ラインを走ることと、目の前の敵を抑え込むこと。このジレンマが、他のレーシングゲームでは味わえない独特の緊張感を生み出している。
操作感は現代的なチューニングが施されており、初心者がすぐに車を走らせることはできるが、上手くなるには確かな練習が必要な「入りやすく、極めにくい」設計になっている。難易度の調整が可能なため、とりあえずストーリーを楽しみたいプレイヤーから、オンラインで上位を目指すやり込み勢まで、幅広い層が自分のペースで遊べる。フルコントローラーサポートも完備されており、レーシングホイールとの相性も良い。テンポとしては一本のレースが凝縮された体験になっており、ダラダラとした作業感はない。
ビジュアル面では、Milestoneが長年培ってきたレースゲームの技術が遺憾なく発揮されている。車体の光沢、路面の質感、天候変化が画面全体のリアリティを高め、高速で流れ去る景色が速度の快感を視覚的に後押しする。特に夜間レースや悪天候下での走行は、画面を通じても緊迫感が漂う演出になっている。サラウンドサウンドへの対応も含め、音の設計も丁寧だ。エンジン音は車種ごとに異なる個性を持ち、ターボのかかり方、タイヤのスキール音、接触時の金属的な衝撃音が、プレイヤーを現実のコースへと引き込んでくれる。
ストーリーは、レースという舞台を借りたキャラクターたちの因縁の物語だ。詳細はネタバレになるため深く語らないが、序盤から「なぜこの人物はレースに命を懸けているのか」という問いが提示され、それが各ステージの動機づけとして機能している。ただ走るだけでなく、相手がどういう人物でどんな背景を持つのかを理解しながら挑むことで、勝利の重みが変わってくる。
『グランツーリスモ』や『Forza Motorsport』といったシミュレーター寄りの作品と比較すると、Screamerはより演出とドラマに傾いたデザインだ。リアルさよりもエモーションを優先している。一方で、『バーンアウト』シリーズのような純粋な破壊快楽ゲームとも異なり、競技としての構造はきちんと残している。その意味では、レースゲームのリアル路線とアーケード路線の間に独自のポジションを築いている作品といえる。クロスプラットフォームマルチプレイヤー対応により、オンラインでプラットフォームをまたいだ対戦が楽しめる点も現代的だ。
プレイ時間の目安として、ストーリーモードを一通りクリアするまでに15〜25時間程度が想定される。その後はオンラインPvPでの腕試し、タイムアタックによる自己ベスト更新、Steam実績の収集といったエンドコンテンツが用意されており、やり込み要素は充実している。共有・分割画面でのローカル対戦にも対応しているため、友人と同じ画面で盛り上がることもできる。
注意点として、価格が¥7,590とやや高めの設定であることは意識しておきたい。ストーリーを一周するだけではコストパフォーマンスに疑問を感じるプレイヤーもいるかもしれない。また、戦闘要素が含まれる分、純粋なレースシミュレーターを求める人には方向性が合わない可能性がある。反射神経と判断力を同時に要求される場面が多く、のんびりとした雰囲気ではないため、ゆったりドライブを楽しみたいタイプには向かない。
「速さと意地のぶつかり合いを味わいたい」「ストーリー付きのレースゲームに飢えている」「オンラインで実力を試したい」という人には強くおすすめできる。逆に、リアルな物理シミュレーションにこだわる人、レース中のドラマよりラップタイムの数字を詰める作業が好きな人には物足りなさを感じるかもしれない。コントローラーを握って、感情ごとアクセルを踏み込みたい人のための一本だ。
スクリーンショット











