Forza Motorsport

Forza Motorsport

開発: Turn 10発売: Xbox Game Studios¥4,840
レース

PlayNext レビュー

レースゲームにおける「リアルさ」とは何か、という問いに対してForza Motorsportが示す答えは明快だ。それは単なる物理演算の精度でも、収録車種の多さでもなく、「車を育てる喜び」と「コースを制覇する達成感」を地続きで体験できる構造にある。500台以上の車種と27の世界的サーキットを擁するこのタイトルは、2023年にシリーズを再起動させた意欲作として、レースゲームファンの間で大きな注目を集めた。 コントローラーを手に取った瞬間から、その操作感の緻密さに気づかされる。タイヤのグリップ感、荷重移動によるアンダーステア・オーバーステアの挙動、ブレーキングポイントのシビアさ——これらはGran Turismo 7と比較しても一線を画すレベルで作り込まれている。アシスト機能を段階的にオフにしていくと、同じ車が別物のように変貌する。フルアシストでの入門から、ABSなし・トラクションコントロールなしのリアル設定まで、プレイヤーの習熟度に応じて難度を調整できる幅の広さは、このシリーズが長年培ってきた強みだ。 キャリアモードの構成は以前のシリーズ作とは大きく変わり、「ビルダーズカップ」という形式が中心に据えられた。特定の車を購入してシリーズに参加し、レースを重ねながらその車自体を強化していく仕組みだ。車のアップグレードには単なるパーツ交換だけでなく、「カー・ポイント」を使って特定のパーツ性能を段階的に解放する要素が加わった。この設計は賛否両論を生んだが、長く一台の車と向き合うことで愛着が生まれ、チューニングへの理解が深まるという体験は確かに独特だ。気がつけば同じコースを何周もこなし、コーナリングラインを0.1秒単位で詰めている自分がいる。 グラフィックのクオリティはXbox/PC向けタイトルの中でも最上位クラスを維持している。光の表現、路面の質感、車体の反射——特に夕方や雨天時のレースでは、画面の中に本物の空気感が宿っているような錯覚を覚える。加えて今作からニュルブルクリンク ノルトシュライフェ(北コース)が追加されており、全長24kmを超える伝説のコースを500馬力超のマシンで攻略する体験は他に替えがたい。サウンド面もエンジン音のリアリティは高く、車ごとに異なる排気音の個性がドライビングの楽しさを底上げしている。ただし楽曲・BGMはレース中にあまり主張せず、サウンドトラックとしての記憶には残りにくい。 世界観・ストーリーという観点では、本作はあくまでレースそのものが主役であり、ドラマチックな物語展開は存在しない。レーシングカルチャーへの愛が随所に滲み出る構成ではあるが、映画的な演出を期待すると肩透かしを食らう。その点でNeed for Speedシリーズのような「ストリートバトルのドラマ」や、Gran Turismo 7の「車の歴史的背景へのリスペクト」を強く打ち出したアプローチとは異なる。Forza Motorsportが大切にしているのは、純粋にコースとマシンと向き合う時間だ。 マルチプレイヤーには「フィーチャードマルチプレイヤー」があり、定期的に変わるレースイベントに参加できる。オープンとランク戦が存在し、世界のプレイヤーと競い合う緊張感は本作の大きな柱だ。クロスプラットフォーム対応のおかげでPC/Xbox間のプレイヤーが混在し、マッチング速度も比較的安定している。ただし、ペナルティシステムがやや甘く、接触プレイへの対応に課題が残る。ここはProject CARS 3やiRacingといった競合タイトルと比べると改善の余地がある領域だ。 プレイ時間の目安としては、キャリアモードを一通り体験するだけで50〜80時間は見込める。各シリーズを全クリアし、多数の車を最大レベルまで育てるとなると、200時間超も珍しくない。マルチプレイヤーやフォルツァのイベントカレンダーに乗れば、継続的に遊べるコンテンツが供給され続ける。ただしアップデートペースについては発売初期にスローと批判されており、コンテンツ量の充実には時間がかかった。現在は改善されてきているが、ライブサービス型の旬を過ぎた印象を持つプレイヤーもいる。 気になる点を率直に述べると、本作は「最高のレーシングシム入門」とも「本格派シムの代替」とも言い切れない微妙なポジションにある。アシスト全開ではカジュアルに楽しめるが、iRacingやAssetto Corsaのような完全シミュレーション志向のプレイヤーにとっては物足りなさが出るかもしれない。また、カー・ポイントシステムに代表されるグラインド要素は、効率を重視するプレイヤーには煩わしく映ることもある。 強くおすすめできるのは、レースゲームに初めて本腰を入れたい人、車の操作を少しずつ学びながら上達の実感を得たい人、そして「ニュルを自分の手で走ってみたい」という夢を持つ人だ。Gran Turismo派の人も、Forzaならではの「西洋的なレーシング体験」の違いを楽しむことができる。逆に、ストーリーや世界観を重視したい人、完全物理シミュレーションを求める人、レース以外のカスタマイズ(ドリフト、ラリー)を中心に遊びたい人には向かない。コースの上に二人のドライバーがいる——一方は記録と戦い、もう一方は自分自身のベストと戦っている。Forza Motorsportが提供するのは、その静かで熱い闘いの場だ。
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