
Forza Horizon 5
開発: Playground Games発売: Xbox Game Studios¥3,795
アクションアドベンチャーレースシミュレーションスポーツ
PlayNext レビュー
メキシコの大地に降り立った瞬間、その圧倒的なスケールに言葉を失う。砂漠の地平線に沈む夕日、熱帯雨林を切り裂くように走る山道、荒々しい火山の斜面、そして色彩豊かな街並み。フォルツァ ホライゾン 5が提供するのは、単なる「レースゲーム」という枠に収まりきらない体験だ。車を走らせること自体が目的になる——そんな稀有な作品である。
ゲームの核心はシンプルだ。広大なオープンワールドのメキシコを舞台に、500台以上の実在する車を駆って自由に走り回る。レースに参加してもいいし、砂漠を横断してもいい。古代遺跡の周りをぐるりと一周して、その景色を眺めながらゆっくり流してもいい。「何かをしなければならない」という強制がほとんどない。この開放感こそが、本作の最大の武器だ。
操作感について言えば、フォルツァ ホライゾンシリーズは「リアルとアーケードの中間」という絶妙な位置に立っている。グランツーリスモのような厳格なシミュレーターほど難しくはないが、マリオカートのような完全なアーケードでもない。ブレーキングのタイミング、コーナリングの荷重移動、路面状況による挙動の変化——これらをある程度意識しながら走ると、車ごとに異なる個性が見えてくる。スーパーカーの鋭い加速、筋肉車の豪快なトルク、オフロード車の粘り強い走破性。同じ道でも、乗る車によってまったく別のゲームになる感覚がある。
やり込み要素は底なし沼に近い。レースイベント、スタントゾーン、スピードトラップ、ドリフトゾーン、危険なルート——マップ上には数え切れないほどのアクティビティが散らばっている。さらにカーマスタリー(各車ごとのスキルツリー)、フォルツァEXP、シーズナルイベント(毎週更新されるコンテンツ)と、コンプリートを目指すと数百時間は平気でかかる。週替わりのシーズナルチャレンジは現役プレイヤーを何年でも引き留める設計になっており、長く遊び続けるモチベーションを維持しやすい。
ビジュアルは現行世代のゲームの中でも最上位クラスと断言できる。4K解像度でプレイすると、車体の塗装に映り込む周囲の景色、ダートを走った後に付く泥汚れ、雨天時の路面の反射——こうした細部のこだわりが積み重なって、圧倒的なリアリティを作り出している。メキシコの風景は季節と時間帯によって表情が変わり、嵐が近づくと空が劇的に変色する動的な気候システムも実装されている。砂嵐の中を視界ゼロで疾走する体験は、ほかのゲームではなかなか味わえない。サウンドも負けていない。エンジン音は車種ごとに収録・調整されており、V8エンジンのドロドロとした低音、電気自動車の静粛な加速音、ターボのブローオフバルブの音——音だけで乗っている車が分かるレベルだ。
世界観という面では、メキシコを舞台にした「フォルツァ ホライゾン フェスティバル」という架空のカーフェスが物語の背景にある。プレイヤーはそのフェスに参加するドライバーとして、様々なチャレンジをこなしながらスーパースターへと成長していく。ストーリーは薄味ではあるが、本作の本質はストーリーではなく「走る体験」そのものにある。フェスティバルという設定が、お祭り気分の明るい雰囲気を終始支えており、プレイ中の高揚感を自然に演出している。
似たゲームと比較すると、まず同じマイクロソフト傘下のフォルツァ モータースポーツとの違いが分かりやすい。モータースポーツがサーキットでのタイムアタックを軸にした本格シミュレーターであるのに対し、ホライゾンはオープンワールドの自由度と娯楽性を優先した作品だ。ザ クルー モータルや Need for Speed シリーズと比べると、ホライゾンは車の挙動と多様性において明確に一枚上手で、コンテンツ量でも圧倒している。一方で、GTAシリーズのように銃撃戦や犯罪要素はなく、純粋に車と走ることに特化している。
プレイ時間の目安は、メインのホライゾンアドベンチャーをクリアするだけなら20〜30時間程度。しかしマップ全体のアクティビティを網羅し、シーズナルコンテンツを楽しみ続けると、文字通り何百時間でも遊べる。エンドコンテンツとしては、最高レベルの車を入手するためのシーズナルチャンピオンシップ、全アクティビティのS評価、カーコレクション完成などが挙げられる。マルチプレイヤーモードでは世界中のプレイヤーとのオンラインレースや協力イベントも充実しており、一人で飽きたら仲間と走るという切り替えも自然にできる。
注意点も正直に書いておく。まず、本作は完全なレーシングシミュレーターではないため、グランツーリスモや iRacing のような精密な物理挙動を求める層には物足りなさがあるかもしれない。また、オープンワールドのアクティビティが多すぎて「何をすればいいか分からない」という迷子感を感じるプレイヤーも一部いる。コントローラーでのプレイが前提に近い設計で、キーボード・マウスだと操作感が損なわれる点も覚えておきたい。さらに、後半になるほど課金DLCの車種が増えてきて「コンプリートには別途費用がかかる」という構造は好みが分かれる。
こういう人に強くおすすめしたい。車は好きだけどガチのシムは難しそうで踏み出せなかった人、広大な世界をドライブしながら気分転換したい人、マルチで友人と並んで走る体験が欲しい人、そして「映像美を堪能しながら何も考えずに走りたい」という人。逆に、タイムアタックや緻密な車セッティングに命を懸けたいリアル志向の人、ストーリー重視でプレイする人、長時間の自由度に圧倒されてしまう人には、他の選択肢を勧めたほうが誠実かもしれない。
¥3,795という価格は、このコンテンツ量を考えれば破格に近い。走ることに少しでも興味があるなら、まず飛び込んでみる価値がある一本だ。
スクリーンショット











