パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語

パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語

PARANORMASIGHT: The Mermaid's Curse

開発: Square Enix発売: Square Enix¥2,480

PlayNext レビュー

2023年に前作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』が発表されたとき、そのゲームは多くのプレイヤーの意表を突いた。スクウェア・エニックスが放ったこのタイトルは、美麗なグラフィックでも派手なアクションでもなく、「呪い」というシステムと徹底的に凝った叙述構造で、アドベンチャーゲームの可能性を静かに押し広げた。そして今作『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』は、その遺伝子をそのままに舞台を三重・伊勢へ移し、夏の海と古来の伝承を背景にした新たな群像劇を届けてくれる。端的に言えば、これはテキストアドベンチャーの皮を被った、奇妙な構造のパズルだ。画面を眺めているだけでは決して解けない謎が、プレイヤー自身の「気づき」に委ねられている。 ゲームプレイの中心は、キャラクターを動かしてマップを探索し、人物と会話して情報を集めるという一見オーソドックスなスタイルだ。しかしこのシリーズ最大の特徴は、単純な「選択肢を選んで進む」フローに収まらない点にある。前作同様、本作でも「呪い」にまつわる特殊なルールが物語に組み込まれており、「なぜ今の選択でゲームオーバーになったのか」を理解すること自体がパズルの一部になっている。失敗して終わり、ではなく、失敗から情報を得てリトライする。その繰り返しが、世界観の解像度を少しずつ引き上げていく。テキスト量は多く、読み応えを求めるプレイヤーには十分な密度があるが、テンポ自体は決して悪くない。セリフと演出のリズムが心地よく、長い章でも飽きずに読み進められる。いつでもセーブできるため、集中できる時間に少しずつ進めるスタイルとも相性がいい。 ビジュアル面では、前作と同じく「360度パノラマ写真を背景に、フラットデザインのキャラクターが立つ」スタイルを継承している。実写に近いリアルな背景と、どこかレトロな雰囲気を持つキャラクターの絵柄が混在するこのデザインは、好みが分かれるかもしれないが、独特の浮遊感があって伝奇ミステリーの雰囲気とよく合っている。伊勢の夏を舞台にした今作では、海岸や磯の景色、古い漁村の路地といった背景が新鮮で、前作の江戸情緒とはまた異なる静謐な緊張感がある。サウンドも秀逸で、不穏さを演出するBGMと、なんでもない日常の場面で流れる穏やかな音楽の落差が、物語のトーンを巧みに操作している。 物語は「人魚伝承」という日本の怪異をモチーフにした青春群像劇だ。複数の若者たちが、それぞれ異なる事情を抱えて同じ夏に伊勢へ集まり、「呪い」という超常現象に巻き込まれていく。「この夏、きみと生き残る呪い」というコピーが示すように、今作は前作以上に「誰かと一緒に生存を目指す」という構図が強調されており、キャラクター間の関係性や感情の変化が物語の核になっている。前作のように視点キャラクターが複数存在し、それぞれの視点から見えるものが異なるため、全体像を把握するには複数ルートをたどる必要がある。ネタバレは避けるが、「人魚の肉を食べると不老不死になる」という古来の伝承が、現代の若者たちの切実な願いや恐怖とどう絡み合うのかは、本作最大の見所の一つだ。 同ジャンルのタイトルとして『逆転裁判』シリーズや『十三機兵防衛圏』、あるいは『ファミコン探偵倶楽部』などが挙げられることが多いが、パラノマサイトシリーズはそのどれとも少し違う。前述の各タイトルは「推理・解明・説得」のカタルシスに力点を置くのに対し、本シリーズは「プレイヤーが自分の行動で物語の構造そのものを掘り下げていく」感覚が強い。失敗が物語の一部であり、メタ的な気づきがゲームプレイに直結する。この構造的なユニークさは、同ジャンルのなかでも際立っている。 プレイ時間の目安は10〜15時間程度。一周では全てが解明されないため、複数ルートを追うことで真の全体像が見えてくる構造になっている。周回は苦ではなく、既読テキストのスキップ機能もあるため、二周目以降は快適に進められる。コレクション要素としてSteam実績やトレーディングカードもある。 注意点として、本作は基本的に「テキストを読む」ゲームであるため、アクション性や派手な演出を期待するとミスマッチが生じる。また、物語の構造上、序盤はやや情報量が少なく感じることがあるかもしれない。じっくり積み上げていくタイプの作品なので、短時間でサクサク進めたいプレイヤーには向かないだろう。前作のプレイは必須ではないが、シリーズの世界観や演出様式を理解していると、より深く楽しめる部分がある。 このゲームが刺さるのは、テキストアドベンチャーを「ただ読むもの」ではなく「解くもの」として楽しめる人だ。日本の伝承や民俗的なホラーに惹かれる人、複数視点の群像劇が好きな人、失敗を重ねながら少しずつ謎の全体像に近づく体験に喜びを感じる人には、強く勧めたい。逆に、物語の結末を早く知りたいせっかちなタイプや、操作性の豊かなゲームを求めている人には合わないかもしれない。¥2,480という価格は、このジャンルとしては手頃であり、前作未経験者でも試しやすいエントリーポイントとなっている。

プレイヤーの声

👍プレイ時間: 33時間

まるでミステリー小説を飲んでいるような感覚でプレイしました。歴史や民俗学的な情報もからみ、とても面白かったです。前作に続き、イラストが好みで楽しめました。

👍プレイ時間: 27時間

パラノマサイトの第2弾が出るん?そら遊ばなあかんやん! と、前作を遊んで楽しかったのもありしっかり隅々まで遊びましたファイル38。 [spoiler]海女ランク99はちょっと諦めましたけれども [/spoiler] 方言がノイズになってたらどうしよう……という心配はあったのですが、ストーリーがつっかえたりするようなこともなくて良かった。 第3弾が出たらぜひまた遊びたい。

👍プレイ時間: 13時間

前作プレイ済みで真エンドまでクリアした感想 前作を楽しめた人であれば今回も楽しめる。もちろん未プレイでも十分楽しめる。 最後の謎解きに関して前作と比較すると、前作は「自分で気づきたい謎」今作は「別に答え見ちゃってもいい謎」といった感じ。

出典: Steam ユーザーレビュー

スクリーンショット

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