
魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra
Madoka Magica Magia Exedra
開発: WRIGHT FLYER STUDIOS発売: Aniplex Inc.無料
PlayNext レビュー
『魔法少女まどか☆マギカ』という作品が持つ独特の「重さ」——希望と絶望が表裏一体であるという哲学——を、ゲームという形式でどこまで体現できるか。その問いへの一つの答えが、この『Magia Exedra』だ。TVアニメ本編や劇場版に登場した歴代キャラクターが一堂に会し、劇団イヌカレー(泥犬)が手がける新たな世界観の中で戦うこのタイトルは、単なるスマホゲームのPC移植版として片付けるには惜しい、原作ファンへの真摯な回答となっている。
バトルシステムの核心は、複数の魔法少女を編成して戦わせるコマンド式のRPGだが、その手触りは思ったよりも骨太だ。各キャラクターはそれぞれ固有のスキルと「マギア」と呼ばれる必殺技を持ち、敵の弱点属性や状態異常を読みながら行動順序を組み立てていく。ただボタンを連打するだけでは中盤以降のコンテンツは乗り越えられず、編成の相性や強化の方向性をきちんと考える必要がある。無料プレイのスマホゲームとしては珍しく、「考えることの楽しさ」をプレイヤーに要求してくる設計になっている。
PvPモードも実装されており、対人戦では相手の編成を読んだカウンター戦略が求められる。ただしPvPに関しては課金ガチャによるキャラクター格差が出やすい側面もあり、ガチャ運の差が純粋な戦略の面白さを覆すケースも少なくない。PvEのシングルコンテンツやオンライン協力コンテンツをメインに楽しむ方が、ストレスなく遊べるという意見が多いのも事実だ。
ビジュアルについては、劇団イヌカレーの影響を色濃く受けた不思議な空間演出が目を引く。迷宮(ラビリンス)を模した戦闘背景は、ぐるぐると渦巻く模様や、シルエットを多用した不穏なデザインで埋め尽くされており、TVアニメを観た人間には「あの世界に戻ってきた」という強烈な既視感を与える。キャラクターのライブ2Dアニメーションも力が入っており、必殺技演出は特に派手で、シリーズファンが思わず息を呑むような見せ方をしてくれる。BGMは梶浦由記サウンドの系譜を感じさせる荘厳さと物悲しさを兼ね備えており、戦闘中の緊張感を高める役割を十分に果たしている。
ストーリー面では、本編の世界線とは独立した新規シナリオが展開される。「記憶」をキーワードにした物語構造は、まどか☆マギカという作品が繰り返し問い続けてきた「存在の意味」というテーマと地続きになっており、原作の空気感を損なっていない。キャラクター同士の掛け合いも丁寧に描かれており、特定のキャラクターへの深い愛着がある人ほど、その会話シーンに満足感を覚えるはずだ。ただし世界観の全容を理解するには相当な量のテキストを読む必要があり、ライトなユーザーにはやや敷居が高い。
同ジャンルのタイトルと比較すると、『FGO(Fate/Grand Order)』のようなシナリオ重視のコマンドバトルや、『ブルーアーカイブ』のようなキャラクター収集系とは確かに近い立ち位置にある。しかし「既存IPの世界観をどれほど誠実に扱うか」という点では、Magia Exedraはかなり誠実な部類に入る。ファンムービーのような薄さではなく、原作に向き合ったシナリオライティングが行われている印象だ。一方で、ゲームプレイの新規性という観点では『パズル&ドラゴンズ』的な発見の喜びや、『ホロウナイト』のようなアクション的快感とは対極にあり、あくまでターン制コマンドRPGの範疇を出ない。
プレイ時間の目安としては、メインストーリーを一通り追うだけで20〜30時間程度は確保したい。やり込み要素としては高難易度クエストの攻略、キャラクターの育成上限解放、イベント限定コンテンツの周回などが用意されており、ハマった場合は100時間を超えることも珍しくない。ただし無料プレイで全コンテンツを制覇しようとすると、ガチャ産の高レアリティキャラクターを引けるかどうかで進捗が大きく変わる側面があり、F2P(無課金)での限界が見えやすいゲームでもある。
注意すべき点を正直に述べるならば、ガチャの天井コストはそれなりに高く、コンプリート欲の強い人ほど課金圧力を感じやすい設計になっている。また運営型ゲームであるため、今後のサービス継続の保証はなく、投じた時間と感情に対する報酬がサービス終了と同時に消える可能性は常にある。スマホゲームの文法に慣れていない人や、永続的なゲーム体験を求める人にとっては、そこがどうしても引っかかるポイントになるだろう。
こういう人には強くおすすめしたい——TVアニメ本編や劇場版を視聴済みで、あの世界に再び触れたいと思っている原作ファン。コマンド制RPGのゆっくりとした戦略性を楽しめる人。オンライン協力プレイで他のプレイヤーと連携する体験に価値を見出せる人。
逆に合わないかもしれない人はこうだ——まどか☆マギカを未視聴で、世界観への事前知識なしにゲームとして評価したい人。アクション性やリアルタイムの判断を求める人。課金せずに全キャラクターを揃えることに強いこだわりがある人。
原作への敬意と、ガチャゲームという経済モデルの制約を両方抱えたタイトルだが、まどか☆マギカを愛する人にとってはその制約を上回る体験が詰まっている。魔法少女たちが再び声を上げる、その瞬間を待っているファンに届いてほしい一作だ。
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