
CloverPit
開発: Panik Arcade発売: Future Friends Games¥1,200
PlayNext レビュー
スロットマシンのリールが回るたびに、心臓が締め付けられる感覚を味わったことがあるだろうか。CloverPitはその感覚を、ゲームという形で徹底的に再現した一作だ。「ローグライト系スロットマシンの悪夢」というキャッチコピーは伊達ではない。プレイヤーは最初から借金を背負った状態でゲームを始め、ひたすらスロットを回し続けることで生き延びようとする。しかしその「生き延びる」という目標が、どこまでいっても達成できない構造になっている。これは娯楽の皮を被った、人間の欲望と絶望を可視化したシミュレーターだ。
ゲームプレイの基本はシンプルだ。スロットを回し、出た目に応じてコインを獲得するか失う。だがCloverPitが他のカジノ系ゲームと一線を画すのは、ローグライトの要素が深く絡み合っている点にある。プレイを重ねるごとにリールの構成を変えるカードが手に入り、有利な絵柄を追加したり不利な絵柄を取り除いたりとデッキ構築的な戦略が生まれる。特定の絵柄の組み合わせで発動するボーナス効果を計算しながら、次のリール構成を考える瞬間は、純粋なギャンブルゲームとはまったく異なる頭の使い方を要求される。「どの絵柄を何枚入れれば最大期待値を得られるか」というパズル的な思考が、スロットというランダム性の塊に戦略の余地を生み出している。
テンポは独特だ。一回のスピンは数秒で終わるが、リール構成の変更や次のステージへの準備に思考時間がかかる。せわしなくなく、かといって間延びもしない。気づいたら30分が経過していた、という没入感がある。借金の残高が減っていくときの高揚感と、思わぬ連敗で残高が膨らむときの焦燥感が交互に訪れ、「もう一回だけ」というループから抜け出せなくなる。
ビジュアルはピクセルアートを基調としており、古いカジノの退廃的な雰囲気を巧みに表現している。けばけばしいネオンカラーと薄暗い背景のコントラストが、「楽しいはずなのにどこか不安」という本作の空気感を視覚的に補強している。BGMはローファイ気味の電子音楽で、長時間プレイしても耳障りにならない設計だ。スロットが揃ったときの効果音は小気味よく、外れたときの音はわずかに不快感を与えるよう意図的に調整されている節がある。音でもプレイヤーの感情を操作しようとする作り手の悪意(褒め言葉)が滲み出ている。
世界観は「終わりのない借金」というシンプルかつ重い前提から始まる。なぜ借金を背負っているのか、誰に返すのか、詳細は語られないが、そのミステリアスな設定がかえって想像力を刺激する。プレイヤーキャラクターは選択肢もなく毎回スロットを回し続けるしかなく、その強制された反復がどこかカフカ的な不条理感を醸し出している。明確なエンディングが存在するのかどうか、それ自体が本作の大きな謎だ。
比較するなら、Balatro(バラトロ)が最も近い参照点になる。Balatroがポーカーとデッキビルドをミックスしてカード戦略の深みを生み出したように、CloverPitはスロットとローグライトを組み合わせてギャンブルに戦略性を与えている。ただしBalatroと比べると数値スケールのインフレが激しく、後半になるにつれて一発のスピンで状況が激変する荒々しさがある。Luck be a Landlordも同系統だが、CloverPitは借金という負のプレッシャーをより前面に押し出しており、常に追い詰められている感覚が強い。
プレイ時間は最初のラン(一周)で1〜2時間程度。ただしローグライトの宿命として、何度も死に戻りながらリール構成の最適解を探ることになるため、真のやり込みプレイヤーなら20〜30時間以上費やすことも珍しくない。各ランで解放される新要素がモチベーションを維持してくれるが、全要素を解放するまでの道のりは長い。
注意点として、ランダム性への耐性が低い人には向かない。戦略を練り込んでも運に殺されることがあり、その理不尽さを楽しめるかどうかが本作との相性を決める。また「借金」という設定がリアル志向で描かれているため、金銭的なストレスに敏感な人はプレイ前に留意してほしい。ゲームとしてのギャンブル表現に対してアレルギーがある場合も、本作は刺激が強すぎるかもしれない。
BalatroやLuck be a Landlordで数十時間を溶かした経験があり、「次の一手」を考え続けることに喜びを感じるプレイヤーには強くおすすめできる。1,200円という価格は、このジャンルへの入口として十分すぎるほどリーズナブルだ。逆に、明確なゴールやストーリーを求めてゲームをプレイする人、運要素の強いゲームにフラストレーションを感じやすい人には合わないだろう。CloverPitは「クリアする」ゲームではなく、「溺れながら泳ぎ方を学ぶ」ゲームだ。
プレイヤーの声
👍プレイ時間: 2時間
借金を返すというよりかは ノルマを稼ぎ続ける。という感じです。 最初からすべてのチャームが解放されるわけではないので 周回必須、活用方法が見いだせないチャームも解放されるので 周回する程難しくなるという一面もあります。 運の要素が強いのはそういうコンセプトなのでしょうがないですが 個人的には気持ちよく勝つ前に飽きが来てしまった。 とはいえ、ジャングルポットを引いたり、 上手くチャームを構成できた時には相応の気持ちよさがあると思うので 運に自信がある人にはお勧めです
出典: Steam ユーザーレビュー
スクリーンショット











