
BIOHAZARD RE:3
Resident Evil 3
開発: CAPCOM Co., Ltd.発売: CAPCOM Co., Ltd.¥399
アクション
Steam レビュー
好評
PlayNext レビュー
追いかけてくる恐怖というのは、RPGのボス戦とも、ゾンビ映画のスクリーンとも根本的に異なる体験だ。BIOHAZARD RE:3が提供するのは「逃げながら戦う」というシンプルな命題を、プレイヤーの神経に直接刻み込む体験である。主人公ジル・バレンタインが居住区から商業地区、下水道、病院と追われながら脱出を図るその道のりは、プレイヤーに「この場所から一刻も早く離れたい」という切迫感を絶えず与え続ける。その中心にいるのが、不死身の追跡者「ネメシス」だ。
操作感は前作RE:2から引き継いだ三人称視点のシューティングベースで、スムーズなエイムと適度な重さのある動きが特徴。しかし最も重要な追加要素は「回避」だ。敵の攻撃を直前に回避することで無敵時間が発生し、カウンター攻撃に繋げるタイミングを生む。これがRE:3のリズムを根本から規定している。ゾンビ一体を相手に慎重に立ち回るRE:2とは異なり、RE:3は動き続けることを前提に設計されている。回避のタイミングを掴むとプレイが劇的に快適になる一方、慣れるまでは無駄弾を消費しがちになる。アンブレラコマンドー部隊や変異した敵など、中盤以降に登場する素早い敵には反射神経が要求される場面もある。
弾薬や回復アイテムのリソース管理は依然として重要だが、RE:2ほどシビアではない。クラフトシステムによってアイテムを組み合わせて強化弾薬を作れるため、探索の動機付けになっている。爆発物を使った部位破壊など、派手な戦術が機能する場面もあり、純粋なサバイバルホラーよりもアクション寄りの設計であることは明確だ。それがRE:2リメイクとの最大の棲み分けポイントでもある。
グラフィックはRE Engineの真骨頂とも言えるクオリティで、ラクーンシティの廃墟と腐敗が精緻に描かれている。潰れた商店街、血痕が乾いたアスファルト、非常灯の赤い光が飛び散る病院の廊下——どのエリアも「生活があった場所が壊れていく」リアリティを感じさせる。HDR対応によって暗部の階調表現が豊かで、光と影のコントラストがホラーとしての緊張感を底上げしている。サウンドも秀逸で、ネメシスが近づいてくる際の地鳴りのような足音と、レザーコートが擦れる音は条件反射的な緊張感を生む。BGMはあえて控えめに設計されており、環境音と銃声が主役になるシーンが多い。
ストーリーはRE:2の事件と並行して起こるラクーンシティ崩壊の最終盤を描く。ジルがひとりで逃げ惑うだけでなく、他のキャラクターとの関係性や組織の陰謀が徐々に明らかになる構造で、終盤に向けてテンポが一気に加速する。映画的な演出が多用されており、プレイヤーが「操作させてもらっている」感覚になる瞬間もあるが、このゲームの場合それがむしろ洗練された映像体験として機能している。ネタバレを避けて言えば、ラストに向かうにつれて物語がカタルシスのある方向に収束していくため、「最後まで見届けたい」という引力が強い。
同ジャンルの作品と比べると、同シリーズのRE:2リメイクが「探索と謎解きのサバイバルホラー」だとすれば、RE:3は「スピードとアクションのサバイバルホラー」に振り切った作品だ。Dead Space(2023年版)が部屋ごとに丁寧に構築された閉塞感を武器にするのに対し、RE:3は開けた通路やオープンエリアでの立ち回りに特化している。ネメシスという単一の追跡者に対する緊張感という点ではAlien: Isolationに近い構造を持つが、プレイヤーがより積極的に反撃できる点で体験の方向性は異なる。
クリアまでのプレイ時間は初周で6〜8時間程度が目安。短いように聞こえるかもしれないが、ランク評価システムとコレクション要素が周回のモチベーションになっている。クリア後に解放されるショップではチートアイテムや衣装、武器を購入でき、難易度「インフェルノ」での縛りプレイなど、やり込み要素も一定量存在する。「1時間でクリア」「ナイフのみクリア」といったチャレンジに向いた構造でもあり、スピードランカー的なプレイスタイルと相性が良い。
注意点として、物語の規模感はRE:2リメイクと比べてコンパクトだ。クロスロードや探索できる範囲の広さでは前作を下回っており、「もっとラクーンシティを歩き回りたかった」という感想は珍しくない。価格設定(通常価格)を見れば相応とも言えるが、ボリューム面でのコストパフォーマンスを重視するプレイヤーはセール時の購入が賢明かもしれない。また、ネメシスとの遭遇が一部スクリプトに依存しており、RE:2のMr.Xのような「常にどこかに潜む」恐怖感は薄め。追跡者への恐怖の持続性を求めると期待外れになる可能性がある。
こういう人に強くおすすめしたい。ホラーゲームに興味はあるが、じっくりとした探索よりもアクション映画的なスピード感を好む人。RE:2リメイクをクリアして「もっとキビキビ動きたかった」と感じた人。また、短時間でゲームを完結させたいが、密度の高い体験を求める社会人ゲーマーにも向いている。反対に、長時間の探索と謎解きによる没入感を求める人や、ボリュームたっぷりのサバイバルホラーを期待する人には物足りなさが残るかもしれない。
HumanNPC: ラクーンシティという滅びゆく舞台を生き延びる体験として、BIOHAZARD RE:3は確かな完成度を持つ作品だ。収録されているマルチプレイモード「BIOHAZARD RESISTANCE」も加味すれば、価格に対する体験の密度は十分に高い。短くても密度の高いアクションホラーを求めるなら、迷わず手に取って良い一本である。
スクリーンショット











