Into the Breach

Into the Breach

開発: Subset Games発売: Subset Games¥456
インディーRPGシミュレーションストラテジー

Steam レビュー

圧倒的に好評

PlayNext レビュー

「次の手を打つ前に、すべての結果が見えている」——これが『Into the Breach』の核心だ。敵の行動が事前に開示され、プレイヤーはその情報をもとに最善手を探す。不確実性によるストレスではなく、「わかっているのに解けない」というパズル的な緊張感が、このゲームの最大の魅力である。456円という価格が信じられないほど、密度の濃い戦略体験がそこにある。 ゲームの構造はシンプルだ。3×3から8×8マスの小さなグリッドに、自軍のメカ3機と侵略者であるVek(虫型エイリアン)が配置される。各ターン、Vekは次のターンに攻撃する対象を矢印で表示する。プレイヤーはその情報を見たうえで、メカを動かし、撃ち、押し飛ばし、地形を利用して状況を制御する。「どこに撃てば複数の問題を同時に解決できるか」を考え続けるゲームだ。 この「押し飛ばし」という仕組みが絶妙に機能している。武器の多くは敵をノックバックさせる効果を持つが、それを使って敵を別の敵にぶつけてダメージを与えたり、川に落として一撃で倒したり、あるいはVekが向けていた攻撃矢印の先から強制的に外したりできる。攻撃とは単なるダメージ手段ではなく、盤面の再配置ツールだ。1手で敵を倒しつつ、別の敵の攻撃対象をずらし、さらに味方メカを安全な位置に滑り込ませる——そういう3手4手先を見越した一手を決めたときの快感は、チェスの詰め将棋に近い。 テンポは非常にテキパキしている。1マップのプレイ時間は5〜15分程度、1ランは4つのアイランド(島)をクリアして2〜3時間。ターン制ながら時間制限はなく、じっくり考えられる。それでいてUIが洗練されており、「どのマスに移動したときに射程範囲がどこまでカバーできるか」がマウスオーバーで即座に確認できるため、思考の流れが途切れない。ストレスフリーな情報設計が、深い戦略思考を後押しする。 ビジュアルはピクセルアート調で、画面は常に俯瞰のグリッド表示だ。派手さはないが、情報の読み取りやすさを最優先に設計されており、攻撃エフェクトや移動アニメーションは明快でクリーン。爆発や凍結、炎上といった状態異常も一目でわかる。BGMはFTLを手掛けたBen Pruntyが担当しており、緊張感を高める電子音楽が戦略的思考の集中を途切れさせない。ゲーム全体の雰囲気は「小さくまとまっているが、どこも手を抜いていない」という印象だ。 世界観は『パシフィック・リム』的な重厚なSFで、人類はVekと呼ばれる地底から湧き出す巨大生物に文明を侵食されている。プレイヤーは時間旅行が可能な未来のパイロットとして、過去に送り込まれ世界を救う使命を帯びる。ストーリーはロールプレイ的な深みよりもフレーバーとして機能しており、各島に固有のキャラクターと小さなイベントがある。多くを語らないが、世界の滅亡が着実に迫っているという緊張感は、システムそのもの——都市を守り切れなければ文明の防衛ゲージが削られる——でしっかりと表現されている。 同じターン制ストラテジーの『XCOM 2』と比べると、スケールとアプローチは対照的だ。XCOMは大規模な戦略マップと長期的なリソース管理が軸で、1ミッションも30〜60分かかる。Into the Breachはその凝縮版で、乱数の理不尽さをほぼ排除し、パズルとしての純度を高めている。『Bad North』のような即時判断型のRTSとも異なり、完全情報を与えたうえで解を探させる点が特徴的だ。ローグライク的な構造は『Slay the Spire』と近いが、デッキ構築ではなくメカの編成と武器のシナジーが中心になる。 初回クリアまでは5〜8時間ほどが目安だが、ゲームの本番はそこからだ。複数の異なるメカ小隊(スクワッド)がアンロックされ、それぞれ全く異なる戦術を要求する。最初の小隊が「押し飛ばし」中心なら、別の小隊は「凍結」で動きを封じる戦術、あるいは「自爆」を組み込んだ諸刃の戦法を取る。各スクワッドで1周するだけで相当な時間が費やせる。さらにハードモード、全島の最高難易度達成など、やり込み要素も用意されており、完全クリアを目指すなら30時間以上は見込める。 注意点として、このゲームは「詰み」が発生することがある。敵の配置と自軍の装備の組み合わせによっては、ベストを尽くしても都市を1件は失わざるを得ない局面がある。これはゲームの不完全さではなくデザインの一部だが、「自分のミスではないのに」と感じるプレイヤーにはフラストレーションになりうる。また、マップが非常に小さいため、スペクタクルや壮大なスケール感は存在しない。大軍を率いる快感や、ゆっくりと帝国を築く体験を求めるなら、方向性が違う。 「限られたリソースで最適解を見つけることに喜びを感じる人」には間違いなくおすすめできる。パズルゲームが好き、詰め将棋やチェスに惹かれる、FTLを楽しんだという人なら高い確率でハマるだろう。短いセッションで完結するため、まとまった時間が取れないゲーマーにも向いている。逆に、アクション性やキャラクターへの感情移入を楽しみたい人、大規模な戦略ゲームのスケール感を求める人には物足りないかもしれない。 456円という価格は、このゲームの価値に対してあまりにも謙虚だ。
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スクリーンショット

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