
Hearts of Iron IV
開発: Paradox Development Studio発売: Paradox Interactive¥2,097
シミュレーションストラテジー
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
第二次世界大戦という人類史上最大の地政学的嵐を、あなた自身の手で操る——それがHoI4の核心体験だ。「ゲームとして史実をなぞる」のではなく、「もし枢軸国が別の同盟を結んでいたら」「もしソ連が西側と手を組んでいたら」という無数のifを、緻密なシミュレーションで体感できる。これはただの戦争ゲームではない。外交・経済・軍事・政治の四輪を同時に回しながら、国家そのものを動かすゲームだ。
操作感は最初こそ圧倒される。画面には師団編成パネル、生産ライン、研究ツリー、外交画面、国家方針(フォーカスツリー)と情報が溢れており、最初の10時間はチュートリアルとにらめっこになる覚悟が必要だ。しかし慣れてくると、このパーツ同士が噛み合う瞬間が快感に変わる。インフラに投資してから工場を建て、工場で戦車を量産し、師団のテンプレートを最適化して前線へ送り出す。この生産から前線への一連の流れが整い始めると、マップ上の矢印が思い通りに動き出す。テンポは遅め——1940年代の世界を1時間以上かけてじっくり動かす——だが、その分「ドイツ電撃戦でフランスをたった2週間で陥落させた」という史実の再現や、「史実とは真逆の展開」を作り出したときの達成感は格別だ。
ビジュアルはリアル志向ではなく、戦略マップ風のフラットなデザイン。国ごとに色分けされた地形マップに師団アイコンが並ぶ様は、まさに作戦室の航空写真のようだ。夜になると都市に明かりが灯り、戦闘が発生すると砲撃音と炎が視覚的に伝わる。BGMはオーケストラ調の重厚な楽曲が各国ごとに用意されており、ナチスドイツを率いればベルリンフィルを思わせるサウンドが、ソ連ならソビエト的な重低音が流れる。長時間プレイを支える没入感の演出として、サウンドの役割は大きい。
世界観の魅力は「実際に起きた歴史の延長線上にある無限の可能性」にある。史実の1936年からゲームは始まるが、あなたの選択次第でスペイン内戦の結末が変わり、独ソ不可侵条約が締結されないまま1939年を迎え、アメリカが孤立主義を貫き続けるという世界が生まれる。フォーカスツリーという国家方針選択システムがこれを支えており、日本なら南進路線を捨てて北進でソ連に攻め込む選択もできる。史実を知れば知るほど、そのifを自分で検証できる喜びがある。
同ジャンルのゲームと比べると、Civilization VIとの違いは明確だ。CivはBC4000年から現代まで数千年を駆け抜けるが、HoI4は1936〜1948年という12年間に特化している。その分、戦術レベルの細かさ——師団の幅・サポート中隊の編成・補給線の管理——がCivの比ではない。Stellarisやヴィクトリア3など同じParadox作品と比べても、HoI4は「軍事」への比重が最も高く、外交や経済はあくまで軍事力を支える手段として設計されている。純粋な戦争シミュレーションとしての完成度は、このジャンルで頭一つ抜けている。
プレイ時間は底なしだ。Steamのレビュー欄には500時間、1000時間を超えるプレイヤーがざらに存在する。一周クリアしたとしても「次は別の国で」「今度は民主主義陣営を弱体化させて」と無限に遊べる設計になっている。エンドコンテンツは特定の勝利条件を達成した後も世界征服を続けることが多く、ゲームオーバー条件がほぼないため「どこで終わらせるか」を自分で決める自由がある。DLCも多数あり、フォーカスツリーの拡張や新シナリオ、新国家の追加が継続的に提供されている。ただし、DLCを全部揃えると費用がかなりかさむ点は要注意だ。
正直に言えば、万人向けではない。チュートリアルは不親切で、最初の数時間は「何をすれば良いのか」が分からないまま戦争を迎えてしまう体験をする人も多い。リアルタイム進行(一時停止あり)で情報量が多いため、判断を迫られる場面が重なると焦りを感じる。また、第二次世界大戦という題材に対して「枢軸国側でプレイする」選択肢があることに不快感を覚える人もいるかもしれない。
こういう人には強くおすすめしたい——第二次世界大戦の歴史に興味がある人、「もしあの時こうだったら」という歴史のifを追いかけたい人、緻密なシステムをじっくり攻略するのが好きな人、長時間かけて大きな計画を実行することに達成感を感じる人。逆に、アクション性や即時の爽快感を求める人、複雑なシステムに触れる前に挫折しやすい人、短時間でサクッと終わらせたい人には向かない。¥2,097という価格は、ハマれば100時間以上の遊戯が確約されたコストパフォーマンス最高の投資になる。覚悟さえあれば、これほど語れるゲームは他にない。
スクリーンショット











