
Sid Meier’s Civilization® VI
開発: Firaxis Games発売: 2K¥700
ストラテジー
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
「もう寝よう」と思ってからさらに3時間が経過している——シヴィライゼーション6をプレイしたことのある人なら、この感覚に深く頷くはずだ。ターン制ストラテジーというジャンルの特性上、「このターンだけ」「次の技術研究が終わったら」「この都市を建てたら」という思考が際限なく続き、気づけば夜明けを迎えている。Civ6の本質は、その「あと一手」の連鎖を生み出す設計の巧みさにある。
プレイヤーは石器時代から宇宙時代まで、数千年にわたる文明の歴史を一手に引き受ける。都市を建て、技術を研究し、外交を行い、時に戦争を仕掛ける。勝利条件は科学・文化・宗教・外交・支配(征服)・得点の6種類が用意されており、どの勝ち筋を選ぶかによってプレイスタイルが根本から変わる。平和的な文化国家を目指すのか、軍事力で周辺文明を制圧するのか、あるいは宗教を広めて精神的覇者になるのか。同じマップで同じ指導者を使っても、目標が違えば全く異なるゲームになる。
Civ6が前作から大きく進化した点のひとつが「区域」システムだ。都市内に施設を建設する際、それぞれの区域を専用のタイルに配置する必要がある。キャンパス(科学区域)は山岳や熱帯雨林に隣接すると産出量が上がり、工業地帯は隣の都市と共有して効率を高められる。マップ上のどこに何を建てるか、という地政学的な判断が常に求められるため、都市運営がパズルとしての面白さを持つようになった。同じ文明でも立地が違えば戦略が変わり、プレイヤーの創意工夫が直接結果に反映される。
操作感はストラテジーゲームの中では比較的入りやすい部類に入る。ユニットの移動から建設指示、外交交渉まで、マウスだけで大半の操作が完結する。チュートリアルも充実しており、完全な初心者でも段階的に学べる設計になっている。ただし「わかる」と「うまい」の間には大きな溝があり、AIの思考パターン、各文明の固有能力の活かし方、区域配置の最適解など、深みは底なしだ。数百時間遊んでも新たな発見がある。
ビジュアルは前作の写実的なスタイルから一転、カラフルでアニメ調のアートディレクションを採用している。最初は「子供向け?」と感じるプレイヤーもいるが、実際に触れると情報の視認性が高く、マップが常に見やすい状態に保たれていることがわかる。ユニットはミニチュアフィギュアのようなデフォルメ造形で愛らしく、大軍勢が衝突する戦闘シーンも独特のカジュアルな迫力がある。BGMはStevensonが手がけたオーケストラ楽曲で、各文明の音楽的伝統を取り入れた構成になっており、時代が進むにつれてアレンジが重厚になっていく演出が秀逸だ。
世界観の魅力は、実在の歴史と架空の「もしも」が交差する点にある。クレオパトラがAIとして現れ、ガンジーが戦争を宣言し、北条時宗が外交で鎌倉幕府を海洋国家に変貌させる。史実の知識があるほど面白さが増すが、知らなくても楽しめる設計になっている。「この文明はなぜこの固有能力を持っているのか」を調べ始めると、自然と歴史の知識が深まる副産物もある。
同ジャンルの代表作であるEuropaUniversalis IVやHeartsofIronIVと比較すると、Civ6は圧倒的に間口が広い。EUやHoIは史実の地政学に縛られたリアル志向のシミュレーションであるのに対し、Civ6は「歴史を素材にしたボードゲーム」に近い。ルールの複雑さより体験の豊かさを優先した設計で、完全な初心者でも数時間で基本を理解できる。Crusader KingsIIIのようなロールプレイ要素は薄いが、その分、純粋なストラテジーとしての完成度が高い。
プレイ時間は一周(ゲーム内の石器時代〜勝利まで)で早くても10〜15時間、じっくりやると30時間を超えることもある。6種類の勝利条件と20人以上の指導者(DLC含むとさらに多い)を考えると、理論上の周回価値は膨大だ。難易度設定も「入植者(易しい)」から「神(理不尽に近い)」まで7段階あり、初心者から上級者まで自分に合ったチャレンジができる。オンラインマルチプレイも実装されているが、一ゲームが長時間になるため、フルゲームを完走できる相手が必要になる点は覚悟が要る。
注意点を正直に書くと、まずDLC問題がある。基本パッケージの内容も十分ではあるが、複数の拡張パック(嵐の訪れ、興亡の歴史、新時代etc.)を加えるとゲームが劇的に豊かになる。フルコンプリートには別途費用がかかり、セール時を狙うのが賢明だ。また、後半ターンになるほど処理が重くなり、ターン送りに時間がかかるようになる(いわゆる「後半のもっさり感」)。ターン制なので急かされないのが魅力の反面、一ゲームへの時間的コミットメントが大きく、気軽に中断しにくい側面もある。
こういう人には強くおすすめする。「将棋やチェスは好きだが、もっとスケールの大きいゲームがやりたい」「歴史が好きで、もし自分が国家を率いたらと想像することがある」「1つのゲームに何百時間でも費やせるタイプ」「考えることが好きで、アクションゲームの反射神経勝負より戦略の積み重ねに快感を覚える」——そんなプレイヤーには、間違いなく人生の一本になり得るゲームだ。
逆に、テンポが速いゲームが好きな人、物語に没入したい人、マルチタスク的な判断を何度も求められることにストレスを感じる人には向かないかもしれない。また「始めたら終われない」という性質は実生活に影響することもあるため、休日の入り口でプレイを始めることを強くおすすめする。¥700という価格は、得られる体験の量を考えると、ゲーム史上最高クラスのコストパフォーマンスだと断言できる。
スクリーンショット











