
Brotato
開発: Blobfish発売: Blobfish¥406
アクションカジュアルインディーRPG
PlayNext レビュー
「ジャガイモが6本の腕で武器を振り回しながらエイリアンの大群を薙ぎ倒す」——この一文でピンと来た人は、すでにBrotatoの虜になる素質がある。見た目のシュールさに反して、このゲームの中身は驚くほど緻密に設計されたローグライトだ。一回のプレイが20分前後で完結し、負けても「もう一回だけ」と手が止まらない。これがBrotatoという体験の核心である。
ゲームの構造はシンプルだ。トップダウン視点のアリーナで、自動照準の武器を最大6つ装備したジャガイモキャラクター(Brotato)を操作し、押し寄せるエイリアンの波を20ウェーブ耐え抜く。各ウェーブの合間にショップが開き、武器やアイテムを購入してビルドを強化していく。このループが延々と繰り返されるわけだが、飽きが来ない。なぜなら、選択肢の組み合わせが膨大すぎるからだ。
操作感について言えば、キャラクターの移動だけに集中できる設計が心地よい。照準や射撃は完全自動なので、プレイヤーはひたすら「どう動くか」「どこに逃げるか」を考えることになる。これが意外と奥深い。画面が敵で埋め尽くされる後半ウェーブでは、わずかな隙間を縫うように動き続ける必要があり、パズルを解くような緊張感がある。テンポは全体的に速く、1ウェーブはだいたい1〜2分で終わる。間延びする瞬間がほとんどなく、常に何かが起きている。
ビルドの自由度こそがBrotatoの真髄だ。キャラクターのパラメータには「攻撃力」「移動速度」「ライフ回復」「クリティカル率」など十数種類があり、それぞれが武器やアイテムと複雑に絡み合う。たとえば「近接特化」のビルドでは、移動速度を上げて敵に密着し、範囲攻撃の近接武器で一網打尽にする戦法が機能する。一方「遠距離スナイパー」型では、弾速と貫通力を伸ばしてエイリアンの行列を一列まとめて貫くのが気持ちいい。序盤のショップで何を引くかによってビルドの方向性が変わり、毎回異なるゲームプレイが生まれる。
ビジュアルはピクセルアートで統一されており、解像度は低いが表現力は高い。Brotato自身のキャラクターデザインが秀逸で、ムキムキの腕を6本生やしたジャガイモが、機関銃や弓やフライパンを同時に振り回している絵面のシュールさは唯一無二だ。エイリアンの種類も豊富で、小さくて素早いもの、大きくてタフなもの、遠距離から弾を撃ってくるものなど、視覚的に識別しやすいデザインになっている。サウンドは派手さより機能性を重視した印象で、効果音が攻撃のフィードバックをきちんと伝えてくれる。BGMはアップテンポで戦闘の緊張感をうまく演出している。
世界観は「地球に不時着した宇宙人のジャガイモが、救助が来るまでエイリアンから生き残る」という設定だ。ストーリー性はほとんどなく、設定はあくまでゲームプレイの舞台装置に過ぎない。しかしキャラクター(Brotato)が40種類以上存在し、それぞれが独自のステータス補正や制約を持つ。「近接武器しか使えない」「移動速度が極端に遅い」「HPが1しかない」といったユニークな縛りを持つキャラクターが多く、それ自体が世界観の奥行きを感じさせる。
似たゲームとして真っ先に名前が上がるのは『Vampire Survivors』だろう。どちらも自動戦闘のローグライトで、押し寄せる敵の波に耐え続ける点は共通している。しかしVampire Survivorsがステージを自由に動き回る「生存ゲーム」であるのに対し、Brotatoは閉鎖されたアリーナでウェーブを処理する「撃退ゲーム」だ。ショップシステムも大きな違いで、BrotatoはVampire Survivorsよりビルド構築の意識的な決断が多く、RPGのキャラクタービルドに近い感覚がある。『20 Minutes Till Dawn』とも方向性が似ているが、Brotatoのほうが武器の種類と組み合わせの幅が広く、より実験的なビルドを試しやすい。
プレイ時間について言えば、まず10〜20時間でゲームの基本的な楽しさを掴める。しかしBrotatoのエンドコンテンツは深い。各キャラクターには難易度0〜5の「Danger Level」があり、最高難易度をクリアするためには相当なゲーム理解が必要だ。全キャラクター × 全難易度を制覇しようとすれば、軽く100時間を超える。Steamワークショップにはコミュニティ製のMODも豊富で、さらに遊びの幅を広げられる。分割画面でのローカル協力プレイにも対応しており、友人と一緒に遊ぶ楽しみ方もある。
注意点を挙げるとすれば、まず視覚的な情報量の多さだ。後半ウェーブになると画面が弾と敵と爆発で埋め尽くされ、自分のキャラクターを見失うことがある。「弾幕系ゲームが苦手」な人には向かないかもしれない。また、ビルドの相性や各キャラクターの強さには格差があり、初見では「このキャラクターは何が強いのかわからない」と感じる場面も多い。ゲーム内の説明が最小限なので、試行錯誤が好きでない人には学習コストが高く感じられるだろう。
こういう人には強くおすすめしたい——隙間時間に遊べるゲームを探している人、ローグライトのビルド構築が好きな人、Vampire Survivorsを遊んで「もっとビルドの深みが欲しい」と感じた人、それから¥406という価格のコストパフォーマンスに敏感な人。反対に、明確なストーリーを求める人、じっくりと長時間をかけてキャラクターを育てるタイプのRPGが好きな人には、物足りなさを感じるかもしれない。
¥406でこの密度のゲームを提供するBlobfishは、明らかに何かが壊れている(褒め言葉)。「次のビルドはうまくいくはず」という確信と「今のビルドはなぜ失敗したのか」という分析が交互に押し寄せ、気づけば深夜になっている。そういう種類のゲームだ。
スクリーンショット











