OMORI

OMORI

開発: OMOCAT, LLC発売: OMOCAT, LLC¥1,980
アドベンチャーインディーRPG

Steam レビュー

非常に好評

PlayNext レビュー

白い部屋に、白いぬいぐるみのような少年が座っている。外には出たくない。何かが、彼を縛り付けている。OMORIはそんな冒頭から始まる。表向きはカラフルなRPGだが、その根底には「見たくないものから目を背け続けるとどうなるか」という、鋭く刺さる問いが貫かれている。プレイし終えたとき、多くの人が「これは単なるゲームではなかった」と感じるだろう。 ゲームプレイはクラシックなターン制RPGをベースにしている。移動、探索、戦闘という三本柱は王道そのものだが、OMORIが独自に持ち込んでいるのが「感情システム」だ。キャラクターは「楽しい」「怒り」「悲しい」「不安」といった感情状態を持ち、その組み合わせによって戦闘の有利不利が変化する。たとえば「怒り」状態のキャラクターは攻撃力が上がるが「恐怖」状態の敵には弱くなる、といった相互作用が生まれる。これは単なる数値操作ではなく、感情そのものをゲームメカニクスに落とし込んだ設計であり、このゲームのテーマと見事に連動している。 探索パートは二つの世界を行き来する形で進む。ひとつは「ホワイトスペース」から続く夢のような異世界、もうひとつは現実世界の郊外の街。異世界は奇抜な生物や浮かんだ島、巨大な食べ物が並ぶシュールな光景が続き、探索欲を強く刺激する。現実世界のパートは打って変わって静かで、夏休みの日常を淡々と歩く感覚だ。この落差が意図的で、二つの世界がどう接続しているかを理解したとき、物語の全貌が見えてくる。テンポはゆっくりめで、せかされる感覚はほとんどない。 ビジュアルは16ビット風のドット絵だが、スーパーファミコン時代のそれとはひと味違う。色彩がとにかく独特で、異世界パートは鮮やかでポップな色使いなのに、どこかズレた不気味さが漂っている。現実世界は逆に彩度を落とし、モノクロに近い表現で日常の「重さ」を出している。このコントラストは意図的な演出であり、両世界の感情的な温度差を視覚レベルで刻んでくる。音楽はBOGOSORTなど複数のアーティストが参加した大規模なサウンドトラックで、異世界の軽快なBGMから現実の静けさを表すアンビエント、そして特定の場面で流れる心臓を鷲掴みにする楽曲まで、バリエーションと完成度が非常に高い。 ストーリーは「主人公オモリと仲間たちの冒険」という建前で進むが、その裏に「何かを隠している」という感覚が最初からつきまとう。伏線の張り方が巧みで、異世界のおかしな出来事や会話の端々に、重要な情報が散りばめられている。ネタバレなしに伝えるとすれば、「このゲームはプレイヤー自身が選択を通じてキャラクターの内面に踏み込んでいく体験」だということだ。一見かわいらしいキャラクターたちの背後に、傷と記憶と後悔が積み重なっており、それが少しずつ、時には一気に、解き明かされていく。 同ジャンルのゲームとして真っ先に名前が挙がるのはUndertaleとEarthen(MOTHER)シリーズだろう。Undertaleが「戦闘しないという選択」を革新的に提示したように、OMORIは「感情と記憶の扱い方」をゲームプレイに組み込んだ。MOTHERシリーズのシュールで温かみのある世界観の影響も強く感じるが、OMORIはその裏側に暗部を隠しているぶん、より精神的な重みがある。また、Yume Nikki(夢日記)の「夢の中を探索する」構造とも似通っており、あのゲームを好んだ人ならOMORIの不気味な親しみやすさにすぐなじめるはずだ。 プレイ時間は一周目がおよそ15〜25時間。選択によって分岐する複数のルートが存在し、いわゆる「真エンド」にたどり着くには特定の条件を満たす必要がある。二周目以降は謎解きの答えを知った状態で別ルートを辿ることになり、気づかなかった伏線や意味の変わる台詞を発見する楽しさがある。やり込み要素としてはサブクエストや収集要素も用意されており、ゲームクリア後にやることがなくなる感覚は少ない。 ただし、正直に伝えておきたい注意点がある。このゲームは抑鬱、自傷、喪失といったテーマを扱っており、その描写は回避的ではなくかなり直接的だ。精神的に辛い時期にあるプレイヤーや、こうしたテーマが苦手な方には過酷に感じる場面がある。また、ホラー的な演出(突然の画面変化、不安を煽るBGM)も含まれるため、ビックリ系が苦手な人は注意してほしい。さらにテキスト量が多く、ゆっくりと話を読み進める作品なので、アクション主体のゲームを求める人とはミスマッチになる。 これを強くすすめたいのは、物語体験をゲームに求める人だ。「ゲームで泣いた」経験がある人、精神世界や記憶のテーマに惹かれる人、MOTHERやUndertaleが好きだった人、そして「かわいいけど怖い」美学に親しみを感じる人には、OMORIは生涯記憶に残る体験になりうる。逆に、アクション性やリプレイ性を重視する人、重たい感情テーマを避けたい人には、積極的にはすすめない。 ¥1,980という価格で、15〜25時間にわたる濃密な感情体験が得られる。エンタメとして消費されるゲームではなく、プレイした後にしばらく頭から離れないタイプの作品だ。それがOMORIというゲームの正体である。
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スクリーンショット

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