
Outer Wilds
開発: Mobius Digital発売: Annapurna Interactive¥1,950
アクションアドベンチャー
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
宇宙の果てで死に続けながら、真実に近づいていく。そんな不思議な体験をするゲームが、Outer Wildsだ。22分ごとに恒星が超新星爆発を起こし、プレイヤーはその瞬間に死んで、また同じ朝の始まりに戻される。このタイムループは「やり直し」ではない。死ぬたびに記憶は残り、知識は蓄積される。あなたが得た「気づき」こそが進行の鍵であり、このゲーム唯一の通貨だ。
ゲームの冒頭、あなたはエイリアンの文明の遺跡を探索する若い宇宙飛行士として目覚める。ロケットは自分で操縦し、燃料を使い果たせば漂流し、大気圏のある星に突入すれば燃え尽きる。操縦は直感的ではあるが、最初のうちは着陸で何度かクラッシュするだろう。しかしそれでいい。このゲームは失敗への罰がきわめて軽い。22分のループが終われば、またロケットの前に立ってキャンプファイヤーを囲んでいる。
太陽系は小さい。惑星の数は6〜7つ程度で、それぞれが独特の物理環境を持っている。砂が地表から天に向かって吸い上げられる「灰の双子星」、水が竜巻のように柱となる海の惑星、内部が量子力学的な振る舞いをする惑星……。広大なオープンワールドではなく、密度で勝負している世界だ。どこに行っても「なぜこうなっているのか」という問いが生まれ、その答えが別の場所に隠されている。情報のジグソーパズルを宇宙規模で組み上げていく感覚がある。
ビジュアルはリアル路線ではなく、どこかレトロSFの雰囲気を帯びたスタイライズドなデザインだ。宇宙空間の星々は美しく、惑星ごとに色調とライティングが異なり、訪れるたびに新鮮な印象がある。しかし何より印象的なのはサウンドだ。バンジョーを中心とした素朴な民族音楽が、宇宙の孤独と探索のわくわく感を同時に体現している。宇宙では音は伝わらないが、このゲームの宇宙にはBGMがある。そのちぐはぐさが逆に詩的で、プレイ後もしばらく頭の中で鳴り続けるほど耳に残る。
世界観の核心はネタバレを避けながらでも語れる部分がある。このゲームは「失われた文明の謎」と「宇宙の終わり」を同時に追う構造になっている。古代の宇宙人ノマイ族が何を発見し、何をしようとして、なぜ滅んだのか。その断片が各惑星の遺跡に刻まれており、文字通り石に刻まれたテキストを読み解いていくことで物語が立ち上がってくる。派手な演出や感情的なカットシーンに頼らず、静かな発見の積み重ねで感情が揺れる。終盤の「あの瞬間」は、ゲームをプレイしてきた体験すべてが収束する感覚があり、多くのプレイヤーが「生涯ベスト」と呼ぶのも納得できる。
他のゲームと比較すると、「謎解きアドベンチャー」という括りでReturn of the Obra DinnやObsidian Entertainmentの作品が思い浮かぶが、Outer Wildsはそれらより物理的な探索の比重が高い。No Man's Skyのような宇宙探索ゲームとは根本的に異なり、収集・クラフト・スケールアップの要素は皆無だ。The Witness(証人)に近い「世界全体がヒントになっている」設計に共感できるなら、この作品は刺さる。
プレイ時間は初回クリアまでおおよそ15〜25時間。ループが22分なので、実際の感覚よりも密度が高い。基本的に一周で完結し、周回プレイやエンドゲームコンテンツは存在しない。DLC「Echoes of the Eye」は別の方向性(ホラー寄り)の体験を追加するが、本編とは趣が大きく異なるため、まず本編を完全に消化してから判断することを勧める。
正直に言うと、このゲームは合わない人もいる。宇宙船の操縦が苦手でストレスを感じる人、ヒントなしの探索が進まずフラストレーションがたまりやすい人、ループという設定そのものに拒絶感がある人には向かない。攻略サイトを見てしまうと核心の「発見の快感」が根こそぎ消えてしまうため、ネタバレ耐性も問われる。
逆に、知的好奇心で動けるプレイヤー、「なぜ?」と思ったら調べずにいられない人、SF小説や宇宙の話が好きな人には、これ以上ない体験が待っている。¥1,950という価格はこのゲームの価値に対してほとんど申し訳ないほど安い。宇宙で一人、ただ問いを持って漂う時間。それがOuter Wildsというゲームだ。
スクリーンショット










