マフィアII コンプリート・エディション

マフィアII コンプリート・エディション

Mafia II: Definitive Edition

開発: Hangar 13発売: 2K¥660
アクションアドベンチャー

PlayNext レビュー

1940年代後半から1950年代にかけてのアメリカ、架空の都市エンパイアベイ。路面電車が走り、ジャズが流れ、ネオンサインがくすんだ街角を照らすその空間に足を踏み入れた瞬間、このゲームが「オープンワールドアクション」ではなく「映画体験」であることを直感的に悟る。マフィアIIの核心は、自由なサンドボックスではなく、丁寧に演出された物語への没入だ。GTAシリーズのような「何でもできる」感覚を期待すると拍子抜けするかもしれないが、逆に言えばそれがこの作品の最大の個性でもある。 主人公のヴィト・スカレッタは、貧しいシチリア移民の息子として育ち、戦争から帰還した後に父親の借金という重荷を背負わされる。正攻法では這い上がれない社会構造のなかで、幼馴染のジョーとともにマフィアの世界へ足を踏み入れていく。この動機が非常にリアルで地に足がついている。ヒーローでも悪のカリスマでもなく、普通の男が環境と選択の積み重ねによって犯罪者になっていく過程を追う──そのリアリティがストーリー全体に重みをもたらしている。 ゲームプレイはTPS(三人称シューティング)を中心に、カーチェイスや近接格闘が絡む構成だ。銃撃戦はカバーアクションが基本で、操作感は現代の水準からすると少し重めだが、それがかえってヴィトというキャラクターの「普通の人間」感を強調している。神業的なアクロバットはできないし、弾丸も数発食らえばあっさり死ぬ。その緊張感が戦闘に緊迫度をもたらす。銃の種類は時代設定に合わせて限られており、トミーガンやリボルバーといったクラシックな武器が中心。ファンタジックな強化要素は一切なく、徹頭徹尾リアリズム路線を貫いている。 移動はオープンワールドの街を車で駆け抜けるスタイルだが、交通ルールの概念が存在するのも特徴的だ。スピード違反や信号無視をすると警察に追跡される。逃走するか、賄賂を払って解決するか──こうした小さな判断の連続が、生きた街の雰囲気を作り出している。ただし、街は基本的に「通り過ぎる舞台」であり、サイドクエストや収集要素はほぼ存在しない。寄り道を楽しむよりも、ストーリーに集中したい人向けの設計だ。 ビジュアル面では、コンプリート・エディション(Definitive Edition)としてリマスターされており、テクスチャや照明が大幅に改善されている。特に夜の雨に濡れた路面や、夕暮れ時のエンパイアベイのスカイラインは今見ても美しく、時代の空気感を見事に再現している。サウンドデザインも秀逸で、時代に合わせた実在のラジオ楽曲が車内に流れる。ビング・クロスビーやデル=バイキングスの楽曲が、あの時代のアメリカにいる錯覚を生み出す。ジャズからロックンロールへの音楽的変遷が、ゲーム内の時間の流れとシンクロしている演出は特筆に値する。 同じマフィア・犯罪もののオープンワールドと比較するなら、GTA IVが最も近い雰囲気を持つ対比軸になる。GTA IVも移民の男が成り上がる物語だが、あちらは圧倒的な自由度と乾いたユーモアが持ち味。マフィアIIはより映画的で、プレイヤーに選択の余地を与えず、演出された感情体験を押しつけてくる──良い意味で。また、同シリーズのマフィアI(リメイク版)と比べると、IIはアクション要素が強く、ストーリーのテンポも速い。IIIはさらに自由度が増すが、反復的なゲームプレイが批判を受けており、物語の密度という点ではIIが最も評価が高い。 プレイ時間は本編クリアまで約10〜12時間。コンプリート・エディションには「ジョーの冒険」「吾輩はジミー」などのDLCが含まれており、これらを含めると15〜18時間ほど。周回プレイの動機は薄く、実績コンプリートを目指すプレイヤーでもなければ2周目は不要だろう。一本道のストーリーゲームとして、ボリュームはやや短めという印象だが、密度は高い。 注意点として、オープンワールドの「箱庭感」を求める人には物足りなさを感じさせる作りだ。街を自由に探索しても得られるものが少なく、サブクエストやミニゲームを期待すると肩透かしを食う。また、女性キャラクターの描き方が時代設定の反映として性的対象化されている部分があり、現代的な視点では不快に感じるプレイヤーもいるかもしれない。戦闘の難易度はそれほど高くなく、アクションゲームとして骨太な挑戦を求める人にも物足りないかもしれない。 ¥660という価格を考えれば、ノワール映画が好きな人・マフィアものの物語に惹かれる人・GTA IVの雰囲気は好きだったがサイドコンテンツに疲れた人には迷わず勧められる。語られる物語の重みと、あの時代のアメリカへのタイムスリップ体験は、この値段では破格だ。逆に、自由なサンドボックス体験・大量のサイドコンテンツ・高難易度のアクションを求める人には向いていない。マフィアIIは「遊ぶゲーム」というより「体験する映画」として評価されるべき作品だ。
Steam ストアで見る →

スクリーンショット

Mafia II: Definitive Edition screenshot 1Mafia II: Definitive Edition screenshot 2Mafia II: Definitive Edition screenshot 3Mafia II: Definitive Edition screenshot 4Mafia II: Definitive Edition screenshot 5Mafia II: Definitive Edition screenshot 6

似ているゲーム