Anno 1800

Anno 1800

開発: Ubisoft Mainz発売: Ubisoft¥1,980
シミュレーションストラテジー

Steam レビュー

非常に好評

PlayNext レビュー

島を一つ手に入れたとき、まずやることは農場を作ることだ。小麦畑を耕し、パン屋を建て、漁師小屋を並べる。住民が増え、要求が増え、気づけば港には船が行き交い、煙突から煙が上がり始める。Anno 1800 はそういうゲームだ。都市建設とサプライチェーン管理が絡み合い、「もう少しだけ」という感覚が止まらなくなる。 Anno 1800 の核心は「生産チェーン」にある。住民は単に家を建てれば満足するわけではない。農民から労働者へ、労働者から職人へと住民を昇格させるたびに、新たな消費財の要求が生まれる。職人はビールとソーセージを欲しがり、商人は自動車とシャンパンを求める。それぞれの消費財を作るためには複数の原材料が必要で、原材料にはまた別の生産施設が必要になる。この連鎖がどんどん深くなっていく。麦芽→ホップ→ビール工場というシンプルな例ですら、農地の面積計算と労働者の配置バランスを正確に管理する必要がある。序盤は穏やかに見えて、中盤以降は生産比率の歪みが一気に表面化する。どこかが詰まれば、連鎖して別の産業も止まる。この複雑さこそが、Anno 1800 の最大の魅力でもある。 操作感は比較的直感的で、建物の配置はドラッグするだけで道路や農地が自動で接続される場合が多い。ただし農場の稼働効率は周辺の農地面積に依存するため、最適なタイル数を把握してレイアウトを計算する必要がある。これが「島のパズル」的な趣きを生み出している。島の形状と地形によって使える土地に制限があるため、どこに何を建てるかの判断が常に問われる。港の周囲を倉庫で埋めたいのか、住宅地として発展させたいのか、工場地帯にするのか。プレイヤーの個性がそのままレイアウトに現れるのが面白い。 テンポはゆったりしている。ゲームは一時停止やスロー再生に対応しており、生産バランスの調整や建設の段取りを焦らず考えられる。急かされる感覚はほとんどなく、数十分かけて島のインフラを整えながら、次の一手を考える時間が心地よい。ただしマルチプレイのPvPモードでは話が変わる。競合他社(NPC・プレイヤー)との経済戦争や島の取り合いが始まると、軍事ユニットの建造と配備が要求され、別のゲームのような緊張感が走る。ただ、シングルプレイのサンドボックスでは競争をほぼ無視して都市建設に集中できるので、戦闘が苦手な人でも安心してプレイできる。 ビジュアルの質は非常に高い。19世紀産業革命時代の建築物が精緻に描かれており、工場地帯は煙突から白煙をたなびかせ、住宅地では馬車が行き交う。海岸線には帆船と蒸気船が混在し、時代の転換期を丁寧に表現している。島ごとの気候や植生も異なり、熱帯の新世界(南米を模した島々)は欧州の本島とまったく異なる景観を見せる。カメラをズームインすると住民が一人一人歩き回っているのが見えて、自分の作った都市が生きているように感じる。サウンドトラックはオーケストラ調で、産業化が進む壮大さと開拓の浪漫を同時に演出している。工場の稼働音や船のエンジン音がリアルに重なり合い、耳でも都市の成長を感じ取れる。 世界観は実際の歴史をベースにしており、19世紀ヨーロッパの産業革命期を舞台にしている。プレイヤーは欧州の島を起点に、アフリカや南米を模した新世界へと版図を広げていく。キャンペーンモードにはライバル実業家や陰謀といった物語が用意されており、単なる都市建設シムに留まらないドラマが展開する。ただ、ゲームの主軸はやはり経済シミュレーションであり、ストーリーはどちらかというと道標的な役割を果たしている。 同ジャンルの競合として Cities: Skylines や Tropico シリーズとよく比較されるが、Anno 1800 はより「生産チェーンの精密管理」に重心を置いている。Cities: Skylines が現代都市のゾーニングと交通インフラに特化するのに対し、Anno 1800 は何をどれだけ作るかという資源フローの設計が中心だ。Tropico シリーズは政治風刺とユーモアが強い一方、Anno 1800 はよりシリアスにサプライチェーンと都市規模の拡張に向き合っている。また、Factorio とも似た「工場最適化」の快感があるが、Anno 1800 は軍事・外交・海上貿易という多様なレイヤーが加わっており、ゲームの幅がより広い。 プレイ時間はキャンペーンをクリアするだけでも40〜60時間、サンドボックスで各コンテンツを探索すると軽く100時間を超える。DLCを含めると北極圏や月世界といった全く異なるマップと産業チェーンが追加されるため、やり込み量は際限なく広がる。エンドコンテンツとして「特定住民クラスを一定数以上昇格させる」「全生産施設を最大効率化する」といった目標があり、最終的には精巧に作り上げた都市のレイアウト自体が達成感の証になる。 注意点として、サプライチェーンの複雑さは人を選ぶ。序盤は手取り足取り説明があるが、中盤以降は自分で生産バランスを把握する必要があり、苦手な人には途中で壁を感じるかもしれない。また、DLCが多く(20以上)、すべて揃えると本体価格の数倍になるため、セール時のまとめ買いが現実的な選択肢になる。本体だけでも十分遊べるが、DLCで大幅に拡張されるゲームであることは把握しておきたい。 都市が着実に成長していく過程を時間をかけて味わいたい人、物流や生産効率の最適化に喜びを感じる人、歴史的な雰囲気の中でゆったりと「帝国」を作り上げたい人には強くおすすめできる。逆に、派手なアクションや即座の達成感を求める人、複雑な数値管理が苦手な人、物語主導のRPGに近いゲーム体験を求める人には合わないかもしれない。Anno 1800 は「都市が完成する」というゴールよりも、「都市が育っていく過程」を楽しむゲームだ。その過程に浸れるかどうかが、このゲームとの相性を決める。
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スクリーンショット

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