
PEAK
開発: Team PEAK発売: Aggro Crab¥880
PlayNext レビュー
一歩踏み外せば、それで終わりだ。足場を確かめながら岩壁をよじ登り、ようやく視界が開けた瞬間に吹き付ける強風。体が傾き、手がスリップし、画面の向こうから友人の悲鳴が聞こえる——そういう瞬間の連続が『PEAK』というゲームの本質だ。「登山ゲーム」と聞いて地味なシミュレーターを想像するなら、それは大きな誤解になる。これは緊張と笑いと後悔が交互に押し寄せる、スリル満点の協力サバイバル体験だ。
プレイヤーは謎の島に迷い込んだ自然探検家として目を覚ます。島から脱出する方法はひとつ——島の中心にそびえる山の頂上を目指すことだ。なぜその山を登ることで脱出できるのか、島に何が起きているのか、物語の全容はプレイを重ねることで少しずつ輪郭を帯びてくる。説明は極力省かれており、プレイヤー自身が環境を読み解いていく設計になっている。霧に包まれた森、古びた遺構、山頂へと続く険しい稜線——世界観は言葉ではなくロケーションそのもので語られる。
操作の手触りは意外なほど直感的でありながら、習熟するほど奥が深い。移動・跳躍・クライミングといった基本動作はシンプルだが、斜面の角度や足元の素材によって体の滑り方が微妙に変わる。「なんとなく登れた」が通用するのは序盤だけで、中盤以降は体重移動やタイミングへの意識が必要になってくる。ソロでも十分に楽しめる作りだが、本当の醍醐味はマルチプレイにある。2〜4人で山を目指すとき、ゲームの性質がまるで変わる。ひとりが先行して安全なルートを探り、別の誰かがずり落ちた仲間を引き上げ、また別の誰かが笑いながら崖から飛び降りる——そういう即興の連携と混乱が延々と続く。
ビジュアルスタイルはローポリとテクスチャを組み合わせたインディーらしい素朴な美しさで、過剰な演出を排して登山体験そのものを前面に出している。朝霧の中に浮かぶ山の稜線、雪煙を上げながら滑る斜面、夕暮れに染まる頂上付近の岩場——場面ごとにしっかりと雰囲気が作られており、スクリーンショットを撮りたくなる瞬間が何度もある。サウンドデザインも丁寧で、足音・風音・岩を掴む手の音が状況をリアルに伝えてくる。BGMは主張しすぎず、緊張が高まる場面ではほぼ環境音だけになる潔さがある。
似たゲームを挙げるなら、まず『Getting Over It with Bennett Foddy』との比較は避けられない。一発ミスで大きく後退する厳しさ、罰ゲーム的な難易度設計、そして「それでも登り続ける」快感は共鳴するものがある。ただし『Getting Over It』が純粋な苦行であるのに対し、『PEAK』は協力プレイとナラティブを加えることで体験に幅を持たせている。難しいが、ひとりで孤独に耐える必要はない。また、協力アクション系で言えば『Unravel Two』や『It Takes Two』との比較もできるが、あちらに比べて『PEAK』はより即興性が高く、失敗することそのものをコンテンツとして楽しむ設計になっている。
プレイ時間の目安はルートの習熟度や難易度設定によって大きく幅がある。初回クリアは3〜6時間程度が目安で、友人と談笑しながら進めれば倍近くかかることもある。クリア後も別ルートの探索やスピードランに挑む余地が残されており、Steam実績の解除を目指すならさらに周回を重ねることになる。1回のプレイが完結した物語を持つため「クリアしたら終わり」とも言えるが、協力プレイの組み合わせ次第で毎回体験が変わるリプレイ性がある。
注意点として、このゲームは「失敗を繰り返すことに耐性がある人」向けに作られている。足を滑らせて数分のルートを振り出しに戻される体験は、モチベーションを削ぐこともある。ソロだとその孤独感が増すため、できれば友人と一緒にプレイするのが前提に近い。また技術的な操作精度が求められる場面があるため、アクションゲームが苦手な人には少しハードルが高い。
友人と「ひどい目に遭いながら大笑いしたい」人には強くおすすめできる。失敗した瞬間のリアクションを共有できる相手がいれば、このゲームの価値は倍増する。逆に、ストレスなくスムーズにゲームを進めたい人や、明快なストーリー体験を求める人には合わないかもしれない。¥880という価格は協力ゲームとしてきわめて良心的で、ゲーム内容のボリュームを考えれば文句なしの買い得感がある。
プレイヤーの声
👍プレイ時間: 11時間
Look at the mountain, plan your route, and then carefully slip and fall all the way down.
出典: Steam ユーザーレビュー
スクリーンショット











