
デッドバイデイライト
Dead by Daylight
開発: Behaviour Interactive Inc.発売: Behaviour Interactive Inc.¥792
アクション
PlayNext レビュー
「発電機を直せ。でも足音がする。懐中電灯を消せ。でも時間がない」——Dead by Daylightをプレイしていると、こんな思考がループし続ける。このゲームの核心は、圧倒的な情報非対称性から生まれる恐怖と緊張感だ。生存者4人 vs 殺人鬼1人という単純な構図の裏に、読み合い・駆け引き・心理戦が幾重にも重なっている。ホラーゲームでありながら、本質はむしろ「かくれんぼ」と「チェイス」の洗練された非対称対戦ゲームだと言える。
生存者側の基本的な目標は、マップ内に散らばった5台の発電機のうち5台を修理して脱出ゲートを開けること。ただし修理中は無防備で、失敗すると大きな音を立てて殺人鬼に居場所を知らせてしまう。見つかれば全力疾走で逃げながらパレット(木製の柵)を投げ落として時間を稼ぎ、壁や障害物を使ってループする。捕まると地面に倒され、フックに吊るされる。仲間が助けに来なければ死。助けに行けば自分が狙われる。この緊張の連鎖が、一試合20〜30分の中に凝縮されている。
殺人鬼側は視点が180度変わる。マップを巡回しながら生存者の気配を探し、発電機の修理音に耳を澄まし、血痕や足跡を辿って追い詰める。各キラーは固有の能力を持つ。例えばトラッパーは罠を仕掛けて生存者の動線を制限し、スピリットは霊体として透明移動して裏をかき、ピッグはアマンダの罠を被せて時間的プレッシャーを与える。この能力の多様性が、何百時間プレイしても飽きない理由のひとつだ。
操作自体はシンプルで、PCでも数十分あれば基本操作は覚えられる。しかしゲームの深みは別のところにある。生存者なら「どこで追われたときに逃げ切れるか」「仲間が吊られたとき助けに行くべきタイミングはいつか」「発電機を分散して直すか固めるか」といった判断の積み重ね。キラーなら「どのルートを優先するか」「今誰を追うか」「パレットを使わせずにダウンさせるにはどの角度で詰めるか」。この読み合いが上達の実感と直結していて、負けても「次はこう動けばよかった」という反省が自然と生まれる構造になっている。
ビジュアルは、リアル寄りのグラフィックながら現実世界とは切り離された「エンティティの領域」という独自の世界観を表現している。煉獄のような赤みを帯びた夕暮れ、腐った廃病院、朽ちた農場、霧に沈む森——各マップには固有の空気感があり、プレイするたびにその場所ならではの恐怖体験が生まれる。BGMはなく、足音、発電機のモーター音、不吉なスティンガー(キラーが近づくと鳴る警告音)が全てを支配する。ヘッドフォン着用推奨というより、必須と言っていい。音の情報量が生死を分けることが頻繁にある。
世界観は「エンティティ」と呼ばれる謎の存在が生存者とキラーを別の現実から招集し、永遠に儀式的なゲームを繰り返させるというもの。各キラーにはオリジナルキャラクターと、マイケル・マイヤーズ、レザーフェイス、フレディ・クルーガー、リングの貞子、エルム街の悪夢のフレディといった版権IPキャラが混在する。生存者側にも独自設定のキャラクターたちが存在し、Wikiや設定資料を掘ると意外と奥深い背景を持っている。ホラー映画ファンには版権コラボの充実ぶりが刺さるはずだ。
似たゲームとの比較で言うと、Hunt: Showdownとは「非対称」という点では異なり(あちらはほぼ対等なPvPvE)、Phasmophobiaとは「マルチプレイホラー」という括りでよく比較されるが、根本的な方向性が違う。Phasmophobiaは協力型の謎解き体験で、DBDは明確な対人戦。ホラー演出を求めるなら前者、ゲームとしての対戦体験を求めるなら本作が断然向いている。純粋な非対称対戦という意味では、現時点でこれほど長寿で成熟したタイトルは他にない。
プレイ時間は100時間でもまだ「初心者」と感じる層が多いゲームだ。生存者とキラーを合わせると操作できるキャラクターは数十体を超え、各キャラのパーク(スキル)を育ててビルドを組む楽しみがある。ランクマッチに相当するブラッドポイントシステムもあり、エンドコンテンツとして「高MMRでの読み合い」が事実上の上位コンテンツになる。シーズンイベントも定期的に行われ、コスメティックや特別チャレンジが追加される。
ただし、正直に言うと人を選ぶゲームでもある。まずキャラクターやパークの解放にブラッドウェブ(ランダムなアンロックシステム)を使う設計で、狙ったビルドを組むのに時間がかかる。新規参入時は強いパークを持つキラーやベテラン生存者と当たることもある。マッチングの質は改善されてきているが、スマーフ(上位プレイヤーが低帯で遊ぶこと)問題は根絶されていない。また、試合展開によっては「延々と追いかけられて何もできずに死ぬ」という体験も起こりうる。これをストレスと感じるか「次こそは」と燃えると感じるかで、このゲームとの相性が決まる。
こういう人に強くおすすめしたい。「対人戦で上達の実感を得たい」「ホラー映画が好きでフレディやマイケルを操りたい」「友人4人で叫びながら協力プレイしたい」「読み合いと心理戦が好き」——これらに複数当てはまるなら、¥792という価格は破格の入門コストだ。逆に、ソロで静かに楽しみたい人、負け試合でのストレスに敏感な人、理不尽な死を受け入れられない人には合わないかもしれない。対人ゲーム特有の理不尽さと向き合い続ける覚悟があってこそ、このゲームの奥深さが見えてくる。
スクリーンショット











